市況研究社日報

原油パイプラインの修復

「市況研究社日報」(石油) 2018年 1月 4日(火)

金融市場の機関投資家は2016年9-11月から、米大統領選でトランプ氏が台頭するのに歩調を合わせて「低成長と低インフレ」を否定し、原油先物で「買い策動」を開始した。さらに2017年7-9月からは「原油買い」に拍車をかけた。

パイプラインのメンテナンスは、通常であれば実質1~2週間程度の短期的要素なのだが、ロイターやブルームバーグなど大手メディアはファンドの買いを「正当化」するために「国際原油需給を左右する重大事故」のように伝えた。そのなかで、「国際原油取引の指標=ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差は「6ドル以上」に拡大した。大西洋をはさんで「ブレント原油」と「NY(WTI)」が「6ドル」の価格差にひらくという異常事態が続いている。

ファンドの買い策動が主導しているので、事実が事実として反映されないときがある。先物市場の内部要因が主導するときもある。しかしながら、われわれが因って立つ基盤は<事実>以外にありません。<事実>はおろそかにせず、把握しておく必要があります。現在、英国の北海「フォーティーズ原油」のパイプラインも、リビアの「Al-Zouk-シドラ」パイプラインも、復旧しています。これまでの経過を下に記します。

リビアのパイプライン修復

リビアの「Al Zouk-シドラ」原油パイプラインは、「Waha 石油会社」が管理・運営している「Mouradah 地域の油田」と「シドラ原油出荷ターミナル」を結ぶパイプライン網の一つです。

「シドラ(Es Sider)原油出荷ターミナル」は、「Waha 石油会社」が操業している油田の原油を出荷している。そして、「Waha 石油会社」は「リビア国営石油(NOC)の小会社」と米国石油企業「Hess Corp.」「Marathon Oil Corp.」「ConocoPhillips」の合弁企業です。

これまでリビアは、東西に政府が分かれて対立が続いているが、互いに収入源が石油であるため石油施設を破壊することは避けてきた。石油施設を封鎖したり、占拠したりすることはあっても、互いに原油生産施設を破壊することは避けてきた。

12月26日(火)の爆発

そのようななかで、12月26日(火)に武装した男達が「Al Zouk-Sidra」パイプラインに爆発物を仕掛けて破壊した。この爆破は、対立する東西政府につらなる民兵組織によるものではなく、たとえば「イスラム国」のような破壊を目的にしたグループの可能性が高い。

リビア全体の原油生産は11月、推定で約「日量100万バレル」、プラッツ社の推定では「日量95万バレル」であった。その内、「Waha 石油会社」が供給していた原油が「日量26万バレル強」であった。「Waha 石油会社」は多くのパイプライン網を管理しているが、爆破された「Al Zouk-シドラ」パイプラインはその一つ。口径24インチのパイプラインが30~35m損傷した。

「Waha 石油会社」は「Al-Zouk line」を停止し「Samah line」に切り替えた。それでも、「リビア国営石油」(NOC)によれば「日量7万~10万バレルは減少する」見込みとなった。パイプラインの修復期間は「日量100万バレル」の原油生産が「同90万バレル」に減少すると想定された。そして、修復には「1週間かかる」と発表した。

12月26日(火)~12月30日(土)は消火と現場検証

まず、爆破されたパイプラインを消火し、そのあと損傷した箇所を撤去した。

12月31日(日)に修復完了

「Al Zouk-シドラ港」原油パイプラインの損傷箇所を取り替えて修復を完了した。爆破から「5日間」でパイプラインは復旧した。

リビア現地の治安状況次第では、パイプライン修復に時間がかかるのではないかと思いましたが、消火のあと損傷した箇所を撤去し、あたらしく取り替える作業は12月30日(土)と12月31日(日)の2日間で完了しました。「シドラ原油出荷ターミナル」のタンカー積取りも、時間と共に平常に戻ると思います。

1日「9万バレル」の原油供給が減少していたとしても、9×5日間=45万バレルに過ぎず、今後、徐々に回復していくとすれば、その影響は大型タンカー(200万バレル)1隻分程度ではないかと思います。「日量数万バレル」は、平常のときでもその程度の変動はあるので、リビアの原油生産を左右することはない。

英国の「フォーティーズ」パイプラインはフル稼働

北海「フォーティーズ原油」パイプライン・システムは12月30日(土)にフル操業に移行した。

(ⅰ)パイプラインの閉鎖中や圧力試験のあいだは、北海の洋上プラットフォームからの供給に規制がかけられていたが、12月30日(土)には生産規制が解除された。

(ⅱ)北海「フォーティーズ原油」の積み出し港である「Hound Point」では、パイプライン閉鎖中の積み出しが停止し、不可抗力条項を発動していたが、これも12月30日(土)に解除された。「Hound Point」の原油積み出しは12月30日(土)-31日(日)に再開した。

以下のような経緯で推移してきた。

12月8日(金)「イネオス社」がパイプラインに細い亀裂を発見

北海「フォーティーズ原油」パイプライン・システムの運営会社である「イネオス社」はパイプラインに細い亀裂を発見した。

12月11日(月)パイプラインを全面的に停止

「イネオス社」は12月11日(月)にパイプラインを完全に止めた。この「フォーティーズ原油」パイプライン・システムに流入するすべての油田に対しても生産規制をした。北海「フォーティーズ原油」の昨年(2016)実績は、日量44万5千バレルであった

12月13日(水)不可抗力条項を発動

「フォーティーズ原油」の供給の不可抗力条項を発動した。修理には「12月11日から2-4週間かかる」見通しであった。

12月25日(月)設備の修理完了→圧力試験開始

「フォーティーズ原油」パイプラインの施設の修理は完了した。12月25日(月)からは、稼働率を下げて供給量を管理しながら、圧力試験を始めた。一部顧客には、原油、ガスの供給を再開した。フル稼働に復帰するのは「年明け1月初め」の予定であった。

12月30日(土)通常のフル稼働に復帰

「イネオス社」は12月30日(土)、12月13日(水)に発動した不可抗力条項を撤廃した。12月30日(土)-31日(日)は、Hound Point から原油積み出しを始めると発表した。パイプラインは「Fully opperational」となった。

北海「フォーティーズ原油」のパイプライン修理期間中、タンカーの原油積取りが繰り延べになった。12月から1月積みに変更されたのは「13隻」で、1月積みのプログラムが見直されることになったが、1月積みから2月積みに延期されたのは「12隻」、それ以上の繰り延べは発生していないので、時間と共に平常に戻ると思います。

その他の石油施設やパイプライン事故の経緯も見ておこう。

カナダ・オイルサンドのパイプライン回復

トランスカナダ社の「キーストン・パイプライン」は11月16日(木)、原油漏れで停止したが、11月28日までにパイプラインの損傷箇所を掘り出して修復した。現在では平常に回復しています。

<米国のカナダ原油輸入量
出所: EIA
単位: 1日あたりバレル(日量/バレル)
2017年12月28日(木)発表

2017年      週間速報値        前年同期
12/16-12/22/2017 日量 332万8千バレル  12/17-12/23/2016 340万9千
12/09-12/15/2017 日量 356万8千バレル  12/10-12/16/2016 343万0千
12/02-12/08/2017 日量 330万2千バレル  12/03-12/09/2016 308万8千
11/25-12/01/2017 日量 287万0千バレル  11/26-12/02/2016 360万4千
11/18-11/24/2017 日量 291万7千バレル  11/19-11/25/2016 328万3千
11/11-11/17/2017 日量 330万0千バレル  11/12-11/18/2016 325万5千
11/04-11/10/2017 日量 337万7千バレル  11/05-11/11/2016 324万3千
10/28-11/03/2017 日量 320万1千バレル  10/29-11/04/2016 320万6千
10/21-10/27/2017 日量 293万3千バレル  10/22-10/28/2016 328万2千
10/14-10/20/2017 日量 301万7千バレル  10/15-10/21/2016 288万5千
10/07-10/13/2017 日量 326万5千バレル  10/08-10/14/2016 294万5千
09/30-10/06/2017 日量 344万2千バレル  10/01-10/07/2016 320万3千
09/23-09/29/2017 日量 355万9千バレル  09/24-09/30/2016 330万5千
09/16-09/22/2017 日量 346万7千バレル  09/17-09/23/2016 319万4千
09/09-09/15/2017 日量 310万5千バレル  09/10-09/16/2016 346万0千
09/02-09/08/2017 日量 297万2千バレル  09/03-09/09/2016 294万9千
08/26-09/01/2017 日量 304万3千バレル  08/27-09/02/2016 315万7千

米メキシコ湾の原油生産の回復

8月下旬のハリケーン「ハービー」、10月初めのハリケーン「ネイト」によって、米メキシコ湾の海底油田の操業に影響が出ましたが、現在ではメンテナンスも終了して回復しています。

<米国の原油生産
出所: 米EIA
単位: 1日あたりバレル(日量/バレル)
2017年12月12日発表
       米国原油生産   ┏━━━ 内訳 ━━━┓
       月間平均値   アラスカ メキシコ湾
       12月12日     油田  海底油田  内陸48州
12月(2017) 977万バレル  ( 50万  167万  759万 )※現在の推定
11月(2017) 966万バレル  ( 50万  166万  750万 )推定
10月(2017) 930万バレル  ( 48万  137万  745万 )推定
09月(2017) 948万バレル  ( 48万  165万  735万 )
08月(2017) 919万バレル  ( 45万  166万  708万 )
07月(2017) 921万バレル  ( 42万  173万  705万 )
06月(2017) 907万バレル  ( 46万  161万  700万 )
05月(2017) 913万バレル  ( 51万  163万  700万 )
04月(2017) 909万バレル  ( 53万  163万  694万 )
03月(2017) 911万バレル  ( 53万  173万  685万 )
02月(2017) 905万バレル  ( 51万  173万  681万 )
01月(2017) 882万バレル  ( 52万  173万  658万 )
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