「日報」(石油)02/23/2018
市況研究社日報

米国原油需給の特徴と見通し

「市況研究社日報」(石油) 2018年 2月23日(火)

今朝のロイターは、次のよう伝えた。

「2月22日の米欧石油相場は、2週間ぶり高値水準に上伸した。予想に反して取り崩しとなった米原油在庫減少が好感され、外国為替相場がドル安に動いたことが追い風になった。」「米エネルギー情報局(EIA)が発表した前週の原油在庫は160万バレル減と、市場予想に反して取り崩しとなった。輸入量が過去最低水準に落ち込み、輸出が増加した中で、WTIの受け渡し地点であるオクラホマ州クッシングの在庫が前週比270万バレル減となった。」

ロイターは、相場の値動きに合わせて、目の前の印象を指摘している。
(ⅰ)オクラホマ州のクッシング在庫の減少
(ⅱ)米国の原油在庫総計も減少した
(ⅲ)外為市場では米ドル安に動いた

ひとつ、ひとつの要素は嘘ではないが、しかし、当社では「真実」と「真実に似たもの」は違うと考えています。われわれは事実から出発しなければならない。

米EIAのデータ

米国は世界市場から原油購入量を減らし、世界市場に向けた供給量を増やしている。米EIAの石油統計は、そのことを明らかにしている。

米国の原油生産と需給(週間速報値)
Source: U.S. Energy Information Administration
2018年2月22日発表
単位: 1日あたりバレル
        ┏━━━━━━━━━━━━┓   ┏━━━━━━━━━━━┓
週      米国原油生産 原油輸入 供給合計 原油処理量 原油輸出 需要合計
02/10-02/16/2018 1027万0千 702万1千 1729万1千 1583万3千 204万4千 1787万7千
02/03-02/09/2018 1027万1千 788万8千 1815万9千 1616万2千 132万2千 1748万4千
01/27-02/02/2018 1025万1千 789万2千 1814万3千 1679万7千 128万7千 1808万4千
01/20-01/26/2018 991万9千 843万0千 1834万9千 1601万3千 176万5千 1777万8千
01/13-01/19/2018 987万8千 804万1千 1791万9千 1648万3千 141万1千 1789万4千
01/06-01/12/2018 975万0千 795万0千 1770万0千 1687万5千 124万9千 1812万4千
12/30-01/05/2018 949万2千 765万8千 1715万0千 1732万3千 101万5千 1833万8千
12/23-12/29/2017 978万2千 796万6千 1774万8千 1760万8千 147万5千 1908万3千
12/16-12/22/2017 975万4千 799万3千 1774万7千 1739万8千 121万0千 1860万8千
12/09-12/15/2017 978万9千 783万4千 1762万3千 1706万3千 185万8千 1892万1千
12/02-12/08/2017 978万0千 736万3千 1714万3千 1695万2千 108万6千 1803万8千
11/25-12/01/2017 970万7千 720万2千 1690万9千 1719万5千 135万8千 1855万3千
11/18-11/24/2017 968万2千 732万9千 1701万1千 1700万3千 141万2千 1841万5千
11/11-11/17/2017 965万8千 787万3千 1753万1千 1683万8千 159万1千 1842万9千
11/04-11/10/2017 964万5千 789万8千 1754万3千 1663万9千 112万9千 1776万8千

米国原油需給の特徴

米EIAが昨夜発表した「2018年2月10日-2月16日」の週間石油統計(速報値)で顕著なことは(ⅰ)米国石油会社の原油輸入量の減少であり、(ⅱ)米国原油の輸出量の増加です。

「2月10日-2月16日」の期間において、米国の1日あたりの原油輸入量は「702万1千バレル」であった。前週の1日あたり原油輸入量が「788万8千バレル」だったので、1日あたり「-86万7千バレル」、1週間(7日間)では「-606万9千バレル」も減少した。

その一方で、「2月10日-2月16日」の期間の米国原油の輸出量は1日あたり「204万4千バレル」であった。前週の1日あたり「132万2千バレル」から「+72万2千バレル」増加した。1週間(7日間)では「+505万4千バレル」も増加した。

つまり、「2月10日-2月16日」の期間において、米国の原油輸入量は1日あたり「-86万7千バレル」減少し、米国原油の輸出量は1日あたり「+72万2千バレル」増加した。それは1日あたり「158万9千バレル」、1週間(7日間)で「1112万3千バレル」の在庫の減少要因になる。米国の石油精製施設の原油処理量が低下しているので、実際の在庫減少はそれ以下にとどまった。

国際原油需給の観点

われわれが<国際原油需給>の観点から見たとき、(ⅰ)米国が世界市場から原油購入量(=輸入)を減らし、(ⅱ)その一方で、世界市場に向けた原油供給量(=輸出)を増やしているとき、それがどういう意味を持つだろうか?

米国は、原油増産を続けており、原油輸入量を削減し、米国原油の輸出量を拡大している。

米国は世界市場からの購入量を減らし、世界市場に向けた供給量を増やしている。米EIAの石油統計は、そのことを明らかにしている。概要としてはそういうことなのだが、われわれはもっと具体的に検討しなければならない。

米国の原油増産は2030-2040年に向けて「日量1200万バレル」に達する可能性が高い。米国の原油輸入量は漸減傾向が続く。しかし、米国がカナダ原油の輸入量を削減するわけではない。米国の原油増産は「シェール・オイル」(=タイトオイル)が主体になるので、今後とも、カナダの重質原油は必要だ。カナダのサンドオイルは、米国向け、そしてアジア向け供給を拡大する可能性が高い。

米国石油会社の輸入削減は「ナイジェリア」などの西アフリカ産軽質原油であり、ここ1年では「ベネズエラ」原油であり、中東の「サウジアラビア」原油です。このあと具体的なデータを示します。

もうひとつ、「ニューヨーク原油」(WTI)は、米国原油在庫総計よりも「クッシング在庫」に相関しているので、この点もデータで示したいと思います。

クッシング在庫の操作

在庫の増減には当業者の思惑や技術的な操作がある。需給とは異なる動きになることがある。とくに「ニューヨーク原油」(WTI)の受渡地点であるオクラホマ州の「クッシング在庫」は、「ニューヨーク原油」(WTI)先物の価格構造に相関している。

●米国原油在庫の要点

米国原油在庫は、「米東海岸」(PADD1)、「米中西部」(PADD2)、「米メキシコ湾」(PADD3)、「ロッキー山脈」(PADD4)、「米西海岸」(PADD5)の各地区で集計されているが、それは基本的に「米国の原油生産+原油輸入量」(供給サイド)と「米国の原油処理量+米国原油の輸出量」(需要サイド)の差によって増減する。しかし、「ニューヨーク原油」(WTI)の受渡地点であるオクラホマ州のクッシング在庫は「需給を反映する」というよりも、「ニューヨーク原油」(WTI)先物の価格構造に相関して増減する。

米国の各地区原油在庫のなかで、昨年(2017)11月以降、顕著に減少したのは「米中西部」地区(PADD2)の「クッシング在庫」であった。米国最大の需要地である「米メキシコ湾」地区の原油在庫は減少していない。

クッシング在庫と米国原油在庫(総計)
Source: U.S. Energy Information Administration
2018年2月22日発表
単位: 1日あたりバレル
      クッシング在庫     米メキシコ湾在庫  米国原油在庫(総計)
02/16/2018  3000万3千 -266万4千  2億2377万7千  4億2047万9千 -161万6千
02/09/2018  3266万7千 -364万2千  2億2232万6千  4億2209万5千 +184万1千
02/02/2018  3630万9千  -71万1千  2億1622万4千  4億2025万4千 +189万5千
01/26/2018  3702万0千 -222万4千  2億1140万2千  4億1835万9千 +677万6千
01/19/2018  3924万4千 -315万0千  2億0493万1千  4億1158万3千 -107万1千
01/12/2018  4239万4千 -418万4千  2億0262万9千  4億1265万4千 -686万1千
01/05/2018  4357万8千 -239万5千  2億0361万0千  4億1951万5千 -494万8千
12/29/2018  4897万3千 -244万1千  2億0617万3千  4億2446万3千 -741万9千
12/22/2018  5141万4千 -158万4千  2億0824万0千  4億3188万2千 -460万9千
12/15/2018  5299万8千  +75万4千  2億1388万0千  4億3649万1千 -649万5千
12/08/2018  5224万4千 -331万7千  2億1751万2千  4億4298万6千 -511万7千
12/01/2018  5556万1千 -275万3千  2億1779万7千  4億4810万3千 -561万0千
11/24/2018  5831万4千 -291万4千  2億1892万5千  4億5371万3千 -342万9千
11/17/2018  6122万8千 -182万7千  2億1911万4千  4億5714万2千 -185万5千
11/10/2018  6305万5千 -150万4千  2億2155万7千  4億5899万7千 -185万4千
11/03/2018  6455万9千  +72万0千  2億1866万7千  4億5714万3千 +223万7千

●NY(WTI)先物の価格構造とクッシング在庫

昨年(2017)11月下旬以降の原油相場で何が起きたのか?

それは「ニューヨーク原油」(WTI)先物において、その価格構造が「順ザヤ」から「逆ザヤ」に転換したことであった。

NY(WTI)先物の価格構造(順ザヤ → 逆ザヤ)
     2017年11月16日  11月17日  11月20日  11月21日  11月22日
NY(WTI)12月限  55.14   56.55   56.09    --    --
NY(WTI) 1月限  55.35   56.71   56.42   56.83   58.02
NY(WTI) 2月限  55.49   56.81   56.53   56.92   58.02
NY(WTI) 3月限  55.60   56.87   56.60   56.96   57.94
NY(WTI) 4月限  55.69   56.89   56.60   56.92   57.78
NY(WTI) 5月限  55.67   56.81   56.53   56.80   57.55
NY(WTI) 6月限  55.57   56.65   56.36   56.57   57.24

●サヤ取りと在庫投資

「ニューヨーク原油」(WTI)先物の価格構造が、期近が安く、先限が高い順ザヤ相場のときは、石油商社などが期近の余剰玉を買い、先限に売りつなぐサヤ取りがあったと推測できる。

石油商社が余剰玉を吸い上げ、その在庫投資を先限に売りつなぐと、タンク費用を差し引いた分が儲けになる可能性があった。「ニューヨーク原油」(WTI)先物の価格構造が順ザヤのときは、タンクに余裕があれば在庫投資の思惑が働くので、クッシング在庫も高水準が続いたと考えられる。

しかし、「ニューヨーク原油」(WTI)先物の価格構造が順ザヤから逆ザヤに変化すると、足もとの余剰玉を吸い上げても、先限がそれより安いので在庫投資の思惑は働きにくい。期近が高く、先限が安い逆ザヤの価格構造では、石油商社のサヤ取りを思惑した在庫投資は減少するので、クッシング在庫の大幅減少となった。

●米国の原油増産と2~5月の在庫増加

米中西部の「クッシング在庫」が減少すると、大手メディアは「米国原油在庫の取り崩し」であるかのように伝える。しかし、昨年11月以降の「クッシング在庫」の減少は、需給とは異なる意図的な在庫削減であり、ニューヨーク原油(WTI)先物の価格構造に相関したものであった。それは石油商社などにとって、「ニューヨーク原油」(WTI)の受渡地点の「クッシング」で、タンクに余剰玉を集めてサヤ取りを思惑するインセンティブがなくなったことを表している。

「米国原油在庫の減少」と言っても、ここ数カ月で顕著に減少しているのは「クッシング在庫」だけであり、米国最大の需要地である「米メキシコ湾」地区の原油在庫は減少していない。「米国には総計「4億2千万バレル」を超す原油在庫がある。例年、2~5月は米国原油在庫が増える。石油商社などが「クッシング在庫」だけ操作しても、2~5月の米原油在庫は増勢が続くと思います。

米国の国別原油輸入量

米国の原油輸入量が過去最低に減少しているが、各国から一律に減っているわけではない。米国の原油輸入量の約半分はカナダ原油が占めており、カナダ原油は漸増傾向が続く。米国石油会社はカナダ原油の輸入量を増やす一方で、それ以外の国からは大幅に削減している。

サウジアラビアなどは、2017年から減産計画を続けるなかで、米国でもアジアでも、市場シェアを低下させている。

●米国のカナダ原油輸入量(漸増)
Source: U.S. Energy Information Administration
2018年2月22日発表
単位: 1日あたりバレル
                   前年同期
02/10-02/16/2018 321万9千バレル   02/17/2017 310万7千バレル
02/03-02/09/2018 352万3千バレル   02/10/2017 313万8千バレル
01/27-02/02/2018 361万8千バレル   02/03/2017 358万0千バレル
01/20-01/26/2018 348万1千バレル   01/27/2017 363万5千バレル
01/13-01/19/2018 304万5千バレル   01/20/2017 319万8千バレル
01/06-01/12/2018 362万5千バレル   01/13/2017 356万2千バレル
12/30-01/05/2018 337万7千バレル   01/06/2017 346万2千バレル
12/23-12/29/2017 352万4千バレル   12/30/2016 342万1千バレル
12/16-12/22/2017 332万8千バレル   12/23/2016 340万9千バレル
12/09-12/15/2017 356万8千バレル   12/16/2016 343万0千バレル
12/02-12/08/2017 330万2千バレル   12/09/2016 308万8千バレル
11/25-12/01/2017 287万0千バレル   12/02/2016 360万4千バレル

ここ1年では、イラク原油も増加している

●米国のイラク原油輸入量(漸増)
Source: U.S. Energy Information Administration
2018年2月22日発表
単位: 1日あたりバレル
                   前年同期
02/10-02/16/2018  74万3千バレル   02/17/2017  18万1千バレル
02/03-02/09/2018  56万0千バレル   02/10/2017  44万0千バレル
01/27-02/02/2018  65万5千バレル   02/03/2017  77万1千バレル
01/20-01/26/2018  78万6千バレル   01/27/2017  47万7千バレル
01/13-01/19/2018  58万6千バレル   01/20/2017  61万7千バレル
01/06-01/12/2018  86万4千バレル   01/13/2017  65万1千バレル
12/30-01/05/2018  63万4千バレル   01/06/2017  95万5千バレル
12/23-12/29/2017  74万6千バレル   12/30/2016  43万6千バレル
12/16-12/22/2017  68万2千バレル   12/23/2016  85万1千バレル
12/09-12/15/2017  70万6千バレル   12/16/2016  55万3千バレル
12/02-12/08/2017  40万2千バレル   12/09/2016  43万2千バレル
11/25-12/01/2017  56万1千バレル   12/02/2016  26万0千バレル

その一方で、大幅に減少しているのはサウジアラビアやベネズエラです。

●米国のサウジアラビア原油輸入量(減少)
Source: U.S. Energy Information Administration
2018年2月22日発表
単位: 1日あたりバレル
                   前年同期
02/10-02/16/2018  51万7千バレル   02/17/2017 106万4千バレル
02/03-02/09/2018  70万0千バレル   02/10/2017 145万7千バレル
01/27-02/02/2018  79万5千バレル   02/03/2017 143万0千バレル
01/20-01/26/2018  84万3千バレル   01/27/2017 130万7千バレル
01/13-01/19/2018  68万2千バレル   01/20/2017 117万8千バレル
01/06-01/12/2018  61万4千バレル   01/13/2017 136万3千バレル
12/30-01/05/2018  61万3千バレル   01/06/2017 110万7千バレル
12/23-12/29/2017  76万6千バレル   12/30/2016  85万8千バレル
12/16-12/22/2017 100万2千バレル   12/23/2016  99万3千バレル
12/09-12/15/2017  51万2千バレル   12/16/2016  94万5千バレル
12/02-12/08/2017  57万8千バレル   12/09/2016 111万8千バレル
11/25-12/01/2017  70万7千バレル   12/02/2016  94万5千バレル

●米国のベネズエラ原油輸入量(減少)
Source: U.S. Energy Information Administration
2018年2月22日発表
単位: 1日あたりバレル
                   前年同期
02/10-02/16/2018  17万4千バレル   02/17/2017  68万3千バレル
02/03-02/09/2018  49万7千バレル   02/10/2017  38万8千バレル
01/27-02/02/2018  65万1千バレル   02/03/2017 108万4千バレル
01/20-01/26/2018  32万3千バレル   01/26/2017  82万4千バレル
01/13-01/19/2018  42万6千バレル   01/19/2017  52万7千バレル
01/06-01/12/2018  36万5千バレル   01/12/2017  61万8千バレル
12/30-01/05/2018  39万2千バレル   01/05/2017 105万5千バレ
12/23-12/29/2017  41万6千バレル   12/30/2016  56万2千バレル
12/16-12/22/2017  66万4千バレル   12/23/2016  77万7千バレル
12/09-12/15/2017  51万4千バレル   12/16/2016  51万4千バレル
12/02-12/08/2017  62万8千バレル   12/09/2016  93万4千バレル
11/25-12/01/2017  45万5千バレル   12/02/2016  80万9千バレル
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□ 市況研究社日報(日刊、E-mail)_総合 _/_/_/_/_/_/_/_/
□ 発行 市況研究社 http://www.shikyo.ecweb.jp/ _/_/_/_/_/
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