市況研究社日報

原油下げの展望

「市況研究社日報」(石油) 2018年7月19日(木)

ロイターや日本経済新聞など、大手メディアは「相場の値動き」に合わせて、後付けで相場を「解説」する。このため、相場が反発すると、データを捻じ曲げてでも「買い」を喧伝する。

当社は、それとは違って、事実に立脚し、データ自身に相場を語らせるようにしています。

昨夜の米EIAの石油統計で注目すべきことは、米国原油在庫やガソリン在庫の増減よりも、米国原油生産が「日量1100万バレル」に達したことであった。

米国原油生産=日量1200万バレルへの道

米EIAが年初1月6日に発表した見通しでは、米国原油生産が「日量1100万バレル」に到達するのは「来年(2019)10-11月」という予想であった。その後、米EIAは予想の修正を繰り返してきたが、「7月7日~7月13日」の石油統計で「日量平均1100万バレル」を記録した。

米国のシェール・オイル生産が引き続き拡大しているだけでなく、米メキシコ湾の海底油田も生産量が増加している。米国原油生産は「来年(2019)10-11月」までに「日量1200万バレル」に拡大する公算が大きい。

現状の推移

データはすべて米EIAの石油統計にもとづいています。
2018年7月18日発表

(1)米国の原油生産と原油処理量(1日あたりバレル)

週         米国原油生産   原油処理量    不足分(要輸入量)
07/07-07/13/2018    1100万0千   1723万9千    623万9千バレル
06/30-07/06/2018    1090万0千   1765万2千    675万2千バレル
06/23-06/29/2018    1090万0千   1765万3千    675万3千バレル
06/16-06/22/2018    1090万0千   1781万6千    691万6千バレル
06/09-06/15/2018    1090万0千   1770万1千    680万1千バレル
06/02-06/08/2018    1090万0千   1750万5千    660万5千バレル
05/26-06/01/2018    1080万0千   1736万9千    656万9千バレル

(2)原油輸入と原油輸出

米国石油精製施設の原油処理量が「日量平均1700万バレル」であれば、米国原油生産が「同1100万バレル」で要輸入量(輸入量-輸出量)は「同600万バレル」あたりです。つまり、米国のネット輸入量が毎週「日量600万バレル台」なら米国原油在庫はヨコバイです。

週           原油輸入    原油輸出    ネット輸入量
07/07-07/13/2018    906万6千    146万1千    760万5千バレル
06/30-07/06/2018    743万1千    202万7千    540万4千バレル
06/23-06/29/2018    905万5千    233万6千    671万9千バレル
06/16-06/22/2018    835万6千    300万0千    535万6千バレル
06/09-06/15/2018    824万2千    237万4千    586万8千バレル
06/02-06/08/2018    809万9千    203万0千    606万9千バレル
05/26-06/01/2018    834万6千    171万4千    663万2千バレル

(3)米国原油在庫

米国原油在庫の増減は、主として、「原油の要輸入量」と「実際のネット輸入量」の差で変動します。「要輸入量」と実際の「ネット輸入量」に差がなければ、米国原油在庫は安定的に推移します。米国の石油需要が急激に拡大しているわけではないからです。

米国の石油精製施設は、それぞれ前もって策定した石油製品の生産計画にしたがって原油を処理しています。生産計画の策定を行なうにあたっては、(ⅰ)需要予測に基づく販売計画数量,販売価格および物流・販売コスト、(ⅱ)精製装置能力および精製コスト、(ⅲ)処理原油の供給可能数量、油種/性状および購入コストといった諸要素を外生変数としてモデルに与え、最適生産パターンを算出します。行き当たりバッタリに生産する工場などありません。

7-8月の原油処理量「日量1750~1770万バレル」は想定した範囲です。9月になると米国の原油処理量は低下します。

米EIAは週ごとに石油統計を発表していますが、その際には同時に「4週平均」も公表しています。それは大型原油タンカー(VLCC)がその週に荷揚げするか、それとも翌週以降にズレるかによって「1隻あたり200万バレル」の変動が発生するからです。また、ガソリンなどの石油製品は、市況見通しによって仮需が膨らむときと委縮するときがあるからです。

タンカー動静は出荷港や受入港での荷役作業の状況や航海中の天候の影響等様々な不確定要因があります。当初の計画通りに事が運ぶわけではありません。タンカー1隻で「200万バレル」「100万バレル」が変動するため、週ごとの統計よりも「4週平均」が実際の需給を表していると言えるかもしれません。

ロイターや日本経済新聞など、大手メディアは週ごとの「在庫」を過大評価し、目の前の印象を一面的に強調する傾向がある。週間統計の「輸入」や「輸出」、「製油所からの出荷量」などは局面的に上下に振れやすいので、「4週平均」を見ることでノイズを是正することができると思います。

本年はガソリン・クラックが低水準

ガソリンの場合、年間を通して季節的な習性があります。米EIAは6月27日に発表したリポートで「本年のガソリン相場は5月に天井を付けた」と分析した。

本年(2018)のガソリンは、それぞれの市場のマーカー原油に対してクラック・スプレッド(精製マージンの指標)が低位です。

ロイターなど大手メディアは、昨夜の「米国石油統計」について、「米国ガソリン在庫が減少したことが買い材料」と伝えた。しかしながら、米国ガソリン在庫が減少しても、これから米国ガソリンが「5月高値」を上抜くのは難しい。

原油相場の景色

当社「日報」では7月13日(金)に<原油市場の景色が変わった>とお伝えしました。

(ⅰ)ブレント原油の限月間価格差が縮小し、期近4限月は同値のヨコ並びになった。

(ⅱ)これまでの原油相場は、逆ザヤの等差数列の価格構造であったが、先週は期近4~5限月が同ザヤとなり、そのあとの限月も価格差を詰めた。

(ⅲ)当社では、週末の相場で<原油市場の価格構造と規則が変わった>と指摘して、<原油市場が今までとは違うパターンと秩序に移行した可能性がある>とお伝えしました。

(ⅳ)ブレント原油先物は国際原油取引の指標です。国際原油取引の指標で、価格構造のパターンが変わってしまったことは、「ニューヨーク原油」(WTI)にも、アジアの「ドバイ原油」にも、そのパターンと秩序が波及します。

(ⅴ)原油市場で、金融市場の機関投資家の「買い策動」に傷みが発生している可能性がある。無理な買い策動は、逆回転したとき、投資資金の打撃が大きいと推測しました。

金融市場の機関投資家は2016年夏から原油市場で「買い策動」を続けています。すでに長期化しているので、回転がきかなくなった買い玉も嵩んできているはずです。

パターンと秩序が変わったこと

原油市場の価格構造と規則が、これまでの等差数列の逆ザヤから同ザヤに移行した。期近の思惑で、すでに先限まで買い上げたことを物語っている。

これまでの価格構造では、限月が期近に回るほど高くなっていたが、現在では先限まで期近の思惑で買い上げたことで、限月が期近に回っても「逆ザヤのサヤ出世」はないと思います。

               4月23日 6月21日 →  7月18日
ブレント原油 2018年06月限   74.71   --       --
ブレント原油 2018年07月限   74.01   --       --
ブレント原油 2018年08月限   73.45  73.05      --
ブレント原油 2018年09月限   72.90  72.80 →   72.90
ブレント原油 2018年10月限   72.35  72.42 →   72.99
ブレント原油 2018年11月限   71.85  72.15 →   73.01
ブレント原油 2018年12月限   71.35  71.86 →   72.97
ブレント原油 2019年01月限   70.86  71.56 →   72.86
ブレント原油 2019年02月限   70.39  71.23 →   72.68
ブレント原油 2019年03月限        70.91 →   72.48
ブレント原油 2019年04月限        70.60 →   72.28
ブレント原油 2019年05月限        70.28 →   72.04
ブレント原油 2019年06月限        69.96 →   71.77

------------------------------------------------------------------

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ 市況研究社日報(日刊、E-mail)_総合 _/_/_/_/_/_/_/_/
□ 発行 市況研究社 http://www.shikyo.ecweb.jp/ _/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/