市況研究社日報

原油下げのプロセスについて

「市況研究社日報」(石油) 2018年8月9日(木)

当社では、今週8月7日(火)の「日報」で次のようにお伝えしました。

7月12日以降、原油市場の<価格形成の構造>と<規則>が変わり、原油相場は下げのプロセスにあること、そして、第1段階の目標はブレント原油期近10月限で<71.50~69.50ドル>と想定して臨むこと。ここを乗り切って行かなければならないと記しました。

当社では、原油下げの第1段階の目標を<ブレント原油期近10月限=71.50~69.50ドル>と見当をつけてきたので、今朝の終値「72ドル台」ではまだ中途半端です。

原油市場の売り方が陣地を確保するためには「ブレント原油」期近で<71.50~69.50ドル>を目指す必要があります。物事が必要とする時間と共に進まなければならないので、粘っこく追求したいと思います。

今朝のブレント原油先物(ICE)
2018年8月8日(水)
限月      始値   高値   安値  帳入値  前日比
10月限 2018  74.64  74.87  71.65  72.28  -2.37
11月限 2018  74.98  75.21  72.02  72.64  -2.35
12月限 2018  75.15  75.41  72.26  72.84  -2.32
01月限 2019  75.20  75.46  72.35  72.92  -2.29
02月限 2019  75.13  75.38  72.32  72.90  -2.24
03月限 2019  74.96  75.21  72.23  72.77  -2.19
04月限 2019  74.70  74.98  72.03  72.59  -2.17
05月限 2019  74.47  74.73  71.81  72.37  -2.14
06月限 2019  74.24  74.47  71.58  72.11  -2.12

今週の原油相場でお伝えしたこと

●アジア市況の「ナフサ/ガソリン」のクラック・スプレッドの低水準
●サウジアラビアのアジア向けタームの調整項値下げ
●米EIAの「2018-2019年のエネルギー見通し」

本年5~8月の石油市場では、アジア市況の「ナフサ/ガソリン」のクラック・スプレッドが低迷した。ガソリン供給の多さで精製マージンの指標が低落した。米EIAも6月末に「ガソリンは5月天井、今後は下落する」と発表した。

サウジアラビアの国営石油会社=サウジアラムコは、アジア市況(シンガポール)の「ナフサ/ガソリン」のクラック低下を無視することができず、アジア向け9月積みターム原油の輸出価格について、「ナフサ/ガソリン」の得率が高い「軽質原油」中心に調整項を値下げした。

サウジ原油各油種の調整項
       Super  Extra
       Light  Light  Light  Medium Heavy  Dubai(Oman+Dubai)÷2
09月 2018  +$4.55 +$1.80 +$1.20 +$0.05 -$0.85
08月 2018  +$5.20 +$2.50 +$1.90 +$0.35 -$0.25
07月 2018  +$6.30 +$3.30 +$2.10 +$0.35 -$0.65  $73.120 $73.171
06月 2018  +$6.30 +$3.25 +$1.90 -$0.05 -$1.35  $73.592 $73.622
05月 2018  +$5.10 +$2.35 +$1.20 -$0.85 -$2.05  $74.413 $74.435
04月 2018  +$5.60 +$2.65 +$1.10 -$0.55 -$1.85  $68.271 $68.277
03月 2018  +$6.10 +$3.25 +$1.65 -$0.20 -$1.55  $62.735 $62.991
02月 2018  +$5.95 +$3.15 +$1.65 +$0.05 -$1.25  $62.721 $62.885
01月 2018  +$5.75 +$3.05 +$1.65 +$0.25 -$1.05  $66.189 $66.253

わかりやすく説明すると・・・

7月の「オマーン原油およびドバイ原油のスポット価格の1カ月間の平均値」(プラッツ社の査定価格)は「73.171ドル」でした。これを基準に油種ごとの調整項を加減して輸出価格(本船渡し)が確定した。

サウジ原油のアジア向け2018年7月積み輸出価格(本船渡し)
各油種の価格フォーミュラ            調整項  輸出価格
アラブ・スーパーライト    7月平均(73.1716.30 =79.471ドル
アラブ・エキストラライト   7月平均(73.171+3.30 =76.471ドル
アラブ・ライト        7月平均(73.171+2.10 =75.271ドル
アラブ・ミディアム      7月平均(73.171+0.35 =73.521ドル
アラブ・ヘビー        7月平均(73.171-0.65 =72.521ドル

サウジアラビアは、アジア向け9月タームの調整項を軽質原油中心に値下げした。中東原油の「オマーン」および「ドバイ原油」の9月平均価格が大幅に上昇しないかぎり、サウジ原油のアジア向け9月積み輸出価格は下落する。

サウジ原油のアジア向け2018年9月積み輸出価格(本船渡し)
各油種の価格フォーミュラ            調整項  輸出価格
アラブ・スーパーライト    9月平均      +4.55 =   ドル
アラブ・エキストラライト   9月平均      +1.80 =   ドル
アラブ・ライト        9月平均      +1.20 =   ドル
アラブ・ミディアム      9月平均      -0.05 =   ドル
アラブ・ヘビー        9月平均      -0.85 =   ドル

米EIAの「2018-2019年エネルギー見通し」の特徴

(1)原油生産の推定は繰り返し訂正される

米国の石油統計には、週ごとに発表される「速報値」と月末に発表される「確報値」があります。しかし、「米国原油生産」に関しては「月間確報値」を発表したあとでも、過去にさかのぼって何度も訂正を繰り返しています。米国においてすら原油生産を直ちに厳密に推定することは難しい。

現在の米国原油生産が「日量1078万バレル」であれば、「日量±10~15万バレル」程度は誤差の範囲と考えておくべきだろうと思います。週間速報値で「日量10万バレル」程度の増減は誤差の範囲、おおざっぱな見通しとして、来年(2019)12月に向けて「日量1200万バレル」に増加する。

(2)米国原油在庫は8月に減少したあと、9~10月から増勢に転じる

米EIAによれば、米国原油在庫は8月末に「4億0390万バレル」あたりに減少し、そのあと9月以降は増勢に転じる見通し。原油生産や石油精製には季節的な特性があり、メンテナンスがある。石油市場の供給と需要には油種ごとに季節的な要因や季節的なサイクルがある。米国原油在庫は年明け(2019)1~5月にさらに増加する。「日本経済新聞」のように週間統計の印象だけを過大評価するのは間違っています。

(3)米国石油精製の原油処理量は前回より削られている

米EIAは7月31日に発表した「月間確報値」で、米国原油生産を過去にさかのぼって下方修正し、8月7日発表した「2018~2019年のエネルギー見通し」では米国石油精製の原油処理量の見通しも若干引き下げた。米国エネルギー産業はそれ行けドンドンではない。

(4)米国ガソリンは「5月天井」のあと下落

米EIAは6月末に「ガソリンは5月天井、今後は下落する」と発表した。今週8月7日に発表した「2018~2019年のエネルギー見通し」でも、この見方を再確認した。

(5)イランの原油輸出量は本年11月以降「日量100万バレル」あたり

米国による「イラン制裁」には「第1弾」と「第2弾」があり、米国のトランプ大統領は「第2弾」の経済制裁で「イラン原油の輸出量をゼロにする」と広言している。しかし、それは無理で、米EIAでも本年11月以降のイラン原油輸出は「日量100万バレル」あたりと予想している。

米EIAによるブレント原油、WTIそれぞれの価格予想は現状を追認したもので、あまり参考にはならない。しかし、上記の「2018-2019年のエネルギー見通し」は役に立つと思います。

当社の立場と意見

当社では7月12日以降、原油相場の<価格形成の構造>と<規則>が変わり、下げのプロセスにあると考えています。

第1段階の目標はブレント原油期近10月限<71.50~69.50ドル>です。

国際原油取引の指標である「ブレント原油期近」で<71.50~69.50ドル>に突入するまでは、まだ買い方の力を侮ることができないので、物事が必要とする時間と共に進む必要があります。

本日8月9日(木)の中東原油は、アジア市場のマーカー原油である「オマーン」および「ドバイ原油」の期近1番限で「71.00~71.30ドル」で揉み合う可能性が高い。

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