市況研究社日報

当社の立場と意見

「市況研究社日報」(石油) 2018年12月5日(水)

当社では、原油相場について、11月20日以降は難しいプロセスをたどっていると考えています。

トランプ-習近平の米中首脳会談後、12月3日(月)の「日報」で次のように記して当面の市場と距離を置くことをお奨めしました。<当面の市場は、米欧金融市場の投資資金が勝手気儘(かってきまま)な憶測で動く可能性が高い。その思惑は短期的で、持続力には欠けると考えています。今週の市場は気分や雰囲気に追随した動きになりやすいので、ひとまず距離を置くことにします。12月3日(月)~12月11日(火)まで、、物事が必要とする時間と歩調を合わせて様子を見ます。>

11月20日以降、ここ2週間の「日報」で、おおまかな説明はしてきました。<ブレント原油は年初の値段を下回るところに下げ、期近継続足の「60ドル」を視野に入れたこと。現在の原油、株式、債券、外為市場の動きは、景気サイクル終盤の短期資金の動きの変化を表していること>。もう一度、できるかぎりわかりやすく整理します。この分析は私自身の個人的な「推測」や「仮定」を含んでいます。

ヘッジファンドの運用成績がマイナス

欧米金融市場の投資資金で、短期で運用されるものの代表は「ヘッジファンド」です。

本年(2018)の相場で「ファンドの買い」が殺られています。「原油の買い」や「株式の買い」で損失を出しています。

「最近の相場で、顧客から預かった全ての資産を失ったヘッジファンドマネージャー。原油を買って、天然ガスを売っていたらしい。」

「ヘッジファンド会社のバリアズニーは従業員の約2割に当たる少なくとも125人を削減する。損失や顧客の資金引き揚げに伴い運用資産は40億ドル(約4500億円)減少している。事情に詳しい複数の関係者によると、同社は運用専門家約40人を擁する13の株式チームを廃止した。残りの削減は年内にバックオフィス従業員を対象に実施する計画だという。バリアズニーは2018年初め時点で運用資産が113億ドルだったが、来年初めは73億ドルでスタートする見通しだと関係者は述べた。同社の「アトラス・グローバル・ファンド」は、11月のリターンがマイナス3.9%で、年初来ではマイナス5.3%。レバレッジを効かせたタイプは11月のリターンがマイナス5.7%で、年初来ではマイナス7.9%。関係者によると、損失の大部分は株式で生じたという。」

「ヘッジファンド運用者のディーパック・グラティ氏は市場にボラティリティーが戻るのを待っていた。そうすれば、何年もの静かな市場のせいで生じた損失を取り返せると考えていた。ところが、最近の相場乱高下にもかかわらず同氏のファンドは本年1-10月に利益を上げられていない。先月の相場急落ではヘッジファンドも打撃を被り、今年の成績は2011年以来の最悪へと向かっている。15年にわたって顧客資金をヘッジファンドに投資してきたGAMホールディングのポートフォリオマネジャー、アービン・ソー氏は、本年の業界パフォーマンスを踏まえ、ファンド閉鎖と手数料引き下げの圧力は増すばかりだろうと予言した。」

米2年債利回りは「2.80%」

ヘッジファンドの運用成績が「株」や「原油」などでマイナスに沈む中で、米2年債利回りは「2.80%」です。

米短期債の利回りは大幅に上昇しており、株式の配当利回りに肩を並べ、10年債利回りと金利差を詰めています。

手っ取り早く、わかりやすく言えば、「株」や「原油」などで「切った、張った」の勝負をしなくても、米債券市場で短期債を買っておけば「株や原油以上の投資リターン」が得られるわけです。現在の市場では、短期債投資によってリスクを抑制しつつ、より高いインカムを期待できる可能性があります。

米2年債は、償還まで2年なので、今後2年の内に米国が破産しないかぎり安全です。償還期間が短い「米2年債」なら、償還したものを新しい短期債を買い直すことを繰り返していけば、保有し続けるだけで継続して現金収入を得ることができる。それが現在「2.80%」です。

当社では、株や原油だけでなく、外為市場のドル円の分析でも「米2年債利回り」を指標にしています。「日本経済新聞」など一部では「米10年債」を掲げるところがありますが、10年債は長期金利の指標であり、短期資金の動向を見るには適さないと思います。

いずれにせよ、本年(2018)1-11月相場で、ヘッジファンドの運用成績がマイナスに沈む中で、米2年債(あるいは米国債)に投資しておけば、安全な投資リターンを得ることができる。これが「11月21-22日」の「日報」でお伝えしたことです。

景気サイクル終盤の短期資金の変化

したがって、11月20日以降の原油相場は「サウジアラビアがどうの、米国のシェール・オイル増産がどうの」という動きではなく、金融市場の投資資金の流れが変化していると分析しています。

景気サイクル終盤の短期資金の動きの変化です。

本年(2018)前半の相場では、米経済の拡大→ 原油買い→ 株買い→ インフレ期待→ 利上げ予想→ 米ドル上昇 という一方向の思惑が席巻した。しかし、米国の政策金利がGDP成長率を超えて3%台に上昇する可能性は低いと思います。

景気サイクルの終盤は、先行きの不透明感が高まります。ボラティリティを抑制しようする動機も台頭します。米短期債の指標である米2年債利回りはすでに大幅に上昇し、イールド・カーブがフラット化し、10年債利回りとの格差を縮小している。現在は中長期債よりも、短期債にシフトすることによって、利回り水準を維持することができるようになっています。

今週のブルームバーグに次のような記事があった。「投資家は過去10年で初めて、ボラティリティー調整後でS&P500種株価指数をはるかに超えるリターンを、安全で流動性の高い証券で得ることができる。世界の大規模な資産クラスの中でリスク調整後のリターンが今年最も高いのは、米財務省短期証券になる見通しだ。JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マルチアセット戦略責任者、ジョン・ビルトン氏が率いるチームは、企業利益の伸びが減速し、マクロ経済のリスクが高まる環境が株式を圧迫すると予想し、それに備えて、ポートフォリオのリスク削減を進めていると説明した。」

景気サイクルの終盤では、信用力の高い資産、利回りの高い資産として、短期債投資が見直される公算が大きい。

11月20日以降の原油相場は、来年(2019)に向けて、金融市場の投資資金が「ポートフォリオのリスク削減」に取り組んでいる可能性が高い。金融市場の投資資金は、目の前の印象に追随して「原油買い」の思惑を募らせることはあっても、持続的な「原油買い」に回帰するとは考えにくい。

12月3日~12月11日について

米欧金融市場の投資資金は、本年の相場で殺られている。このため、なんとか挽回(ばんかい)しようと目の前の印象に追随し、勝手気儘(かってきまま)な憶測で動く可能性が高い。

米欧金融市場の投資資金の運用成績が悪化しているので、各市場で無理をした思惑に走ることが考えられます。そうした思惑は<短期的>で<持続力には欠ける>と思います。

今週の市場は気分や雰囲気に追随した動きになりやすいので、ひとまず距離を置くことにします。

現在の原油、株式、債券、外為市場の動きは、景気サイクル終盤の短期資金の動きの変化を表しています。景気サイクル後期の不透明感が高まる中では、金融市場の主な投資先として短期債投資が見直される公算が大きい。資源・エネルギーに資金をシフトさせるとは考えにくい。

12月3日(月)~12月11日(火)まで、、物事が必要とする時間と歩調を合わせて様子を見ます。

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