原油価格の分析と予想

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201783日更新

「原油戻り」に対する意見

201782日(水曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3503
現在の相場で「難しいナ」と思うのは、(@)一つは外為市場における「ユーロ」の戻り、(A)もう一つは「原油」の戻りです。731日(月)〜81日(火)は、これをどうにか整理しようとしましたが、結局、「日報」で送信することはできませんでした。本日82日(水)は、当社の立場と意見を説明しながら入力します。
●ロイターやブルームバーグによる「戻り」の理由付け
ロイターやブルームバーグは、相場の値動きを後追いで説明しています。後から「理由付け」するので、値動きを「正当化」する役割を果たしている。とくに「時事ニュース」を切り貼りして「理由付け」にすることが多い。このかんロイターやブルームバーグは、原油戻りについて、以下の「要素」を伝えた。
(@) 米国原油在庫が減少したこと。
(A) ベネズエラのマドゥロ大統領が内外の反対のなかで「制憲議会選挙」を強行し、米トランプ大統領が「ベネズエラ原油の禁輸を実施する」との思惑が一部にあったこと。
(B) そして、直近の石油製品の精製マージンを押し上げたものとして、アムステルダムにあるシェルの「ペルニス製油所」で729日(土)午後に火災が発生し、操業が停止して石油製品の出荷が止まったこと。
●当社の立場と意見
当社では、相場の値動きを後追いで説明するために、「時事ニュース」を切り貼りして「理由付け」にすることは、市場分析として<根本的に間違っている>と考えています。われわれは具体的に、実際の業務として考えなければならない。
<米国原油在庫の減少
本年(
2017)の原油市場でもっとも特徴的なことは、(@)米国の原油増産が続き、(A)さらに2月以降は米国が日量100万バレルの原油輸出国として台頭していることです。米国は(1)原油増産を続けるだけでなく、(2)米国原油の輸出量を日量100万バレルに拡大し、(3)それによって米国原油の在庫積み増しを緩和し、在庫の再配分を可能にしたわけです。中東産油国が現在のような販売政策を続けるなら、アジア消費国は輸入を多角化し、中東依存度を引き下げ、米国原油の購入を増やす可能性が高い。これがグローバルな原油市場の「需給改善」だろうか?
<ベネズエラ
ベネズエラのマドゥロ政権による「制憲議会選挙」強行について、当社では、<米トランプ大統領のベネズエラ原油の輸入禁止はない>と考えてきたので、「日報」でも取り上げませんでした。トランプ大統領については昨年11月、(a)多重虚偽、(b)危険な幻想の商売、(c)現実からの逃走 という3つの要素で特徴付けた。もし、米国がベネズエラ原油の輸入を禁止すれば、すでに飢餓が始まっているベネズエラを深刻な危機に追いやり、国家自体を崩壊させる可能性があり、そうした混乱が周辺国にも波及する事態になれば今度はロシアが出てくる公算が大きい。普通に考えてベネズエラ原油の禁輸はありません。ベネズエラのマドゥロ大統領を非難するなら、その国債を引き受けた米大手金融機関や野村証券に対して制裁を決める方が効果があると思います。
<欧州ARAオイル・ハブの製油所停止
[1] オランダのアムステルダムにある欧州最大のシェルの製油所で729日(土)午後に火災が発生し、操業が停止した。欧州のオイル・ハブ(アムステルダム−ロッテルダム−アントワープ)の最大の製油所で火災事故が発生して操業が停止したことは、以下のような思惑の連鎖を発生させた。
(@) 欧州ARA地区のシェルの「ペルニス製油所」(日量404千バレル)の操業が止まったことは、米国のメキシコ湾地区の製油所やアジアのシンガポールの製油所、さらに中東産油国の製油所から「ディーゼル」や「ジェット燃料」など中間留分が欧州に運ばれる。
(A) それによって、国際的に「ディーゼル」や「ジェット燃料」など中間留分の需給がタイトになり、石油製品の需給引き締まりから精製マージンが上昇する。
(B) 米国のメキシコ湾やシンガポール、中東などから欧州に向けて石油製品が運ばれるので、「プロダクト・タンカー」の需要が増加し、油送船の運賃が上昇する。
こうした思惑の連鎖は理解することができます。ロイターの記事のなかでは「パニック買い」と表現する箇所があった。しかしながら、本日82日(水)の「日本経済新聞」(20面、商品市況欄)のように「欧州の精製拠点の停止で、アジア市場での調達が増えるとの思惑が市場に広がり、取引量が伸びている。品薄感が出ており、日本の石油会社にとって輸出機会の拡大につながりそうだ。」と言うのはチョット違います。なぜなら、現在でも「ペルニス製油所」の損傷程度、修復工事の日程などが明らかになっていないからです。
[2] 「ペルニス製油所」の操業停止がいつまで続くのかということは、石油会社などが現実の業務を進めるうえでもっとも肝心なことです。「ペルニス製油所」の停止期間が不明のまま、米国やアジアの石油会社が実際の業務を始めることはできないと思います。操業停止がいつまで続くのかわからないまま、すでに逆ザヤとなった石油製品の期近を基準に現物を集めて油送船を手配できるだろうか?もし、「ペルニス製油所」が8月下旬に操業を再開するなら、上記(@)〜(B)の思惑の連鎖は消滅します。
[3] 「ペルニス製油所」の停止期間が明らかにならないことには、アジアや米国で欧州向け業務は実際に進展しないと思います。操業再開が「8月下旬」あるいは「9月上旬」なら、欧州製油所の中で(a)メンテナンス明けの製油所を稼動したり、(b)原油処理量を拡大することによって、ある程度はカバーできるはずで、欧州までの移送を考えると「アジアのシンガポール」で「中間留分」が買い材料になるとは思えない。「日本の石油会社にとって輸出機会の拡大につながる」かどうか、そんなものが約束されるわけではない。アジア市場において、現在も、プロダクト・タンカー手配の報告はありません。
●現在の戻り=ファンドの買い策動
民主党所属の衆議院議員である今井雅人氏は、本年6月末に次のように記した。
「今年(2017年)は、ヘッジファンドなどの機関投資家の運用成績が不調のようで、連日、解約続出やリストラなどといったニュースを目にします。そんな状況の中、彼らも利益を上げるチャンスがないか、ずっと模索を続けてきました。」「今年のこれまでの負けを取り返すために勝負をかけようとしているようです。仕掛け相場がどこかで力尽きるのは間違いないのですが、まだ、しばらくの間は相場を引っ張ろうとするのではないかと考えています。」
[1] 相場には、今井氏が指摘するような人間の心のなかで作用している力があります。個人的な意見を言えば、本年(2017)の外為市場における「ユーロ高」や、現在の「原油高」は、おおざっぱに言ってそういう思惑を反映していると考えています。そういう思惑の連鎖反応は、買うものが買ってしまえば失速します。
[2] 現在の戻りは「ファンドの買い策動」です。原油市場の内部要因に「火種」を残しているときは、ファンドはしつこく相場を引っ張り上げ、長引かせようとする。「ブレント原油」や「ニューヨーク原油」(WTI)の取組要因は、「ブレント原油」を中心にファンドの買い長が拡大し、「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の中心限月の価格差は「3ドル」に向けて伸びる。「ブレント」と「WTI」の中心限月の価格差は「原油市場におけるファンドの買い策動」を表していると考えています。そういうファンドの思惑について、「時事ニュース」を切り貼りして「正当化」することはない。価格差の動きを見れば、<現在がどういう段階にあるのか>推測できると思います。
[3] 通常、「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の同一限月の価格差は「2ドル」が平均的な指標です。「平均」を超えた価格差の拡大は持続することはまずありえない。伸びたあとは<平均への回帰>が起こる。買うものが買ってしまえば、市場の連鎖反応は止まるので、「ブレント」と「WTI」の価格差は縮小に反転すると考えています。
●石油会社(BP)の見通し
ある石油会社(BP)の人は、原油相場の見通しについて、次のように述べていた。
(@) 国際原油価格の指標=ブレント原油は、来年(2018)も「$45$50」中心に推移する公算が大きい。
(A) 国際的な原油需要は、本年(2017)第2四半期に回復したあと、来年に向けて日量140150万バレル程度増加する。
(B) 米国シェール・オイルは、この水準であれば増産が続く。ブレント原油が「$52$53」に上昇すると、さらにシェール・オイルが増加する可能性が高く、供給が増えると「$45」に下落するだろう。こうした意見は、当社の<あたらしい普通の相場>と共通するものを含んでいます。
●本日の東京プラッツ・ドバイ原油
本日82日の中東原油(プラッツ・ドバイ原油)は、昨日81日のアジア査定時間($51.30)から「-1ドル50セント」下げて「$49.80」あたりの可能性が高い。
Seller  - Buyer  8月1日価格    8月2日価格
Chinaoil - Shell  $51.30  →  49.80前後
Chinaoil - Shell  $51.30
Reliance - Shell  $51.30
Chinaoil - Shell  $51.30
Reliance - Shell  $51.30

為替は、米国債利回りが引き続きヨコで保ち合っているので、「1ドル=110.60110.30110.00円」で考えます。
限月               円貨換算(110.43円)
東京ドバイ原油07月限  $49.80  34,590円/KL
東京ドバイ原油08月限  $50.10  34,800円/KL  -860円安
東京ドバイ原油09月限  $50.22  34,880円/KL  -920円安
東京ドバイ原油10月限  $50.32  34,950円/KL  -810円安
東京ドバイ原油11月限  $50.42  35,020円/KL  -750円安
東京ドバイ原油12月限  $50.52  35,090円/KL  -700円安


米国原油のアジア向け輸出

2017731日(月曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3501
[1] ロイターやブルームバーグなどは、旧来からの先入観にもとづき、「米国原油在庫の減少=需給改善」と伝えている。しかしながら、当社「日報」では、本年(2017)の原油市場でもっとも特徴的なことは、(@)米国の原油増産が続き、(A)さらに2月以降は米国が日量100万バレルの原油輸出国として台頭したことだとお伝えしてきました。
[2] 米国は(1)原油増産を続けるだけでなく、(2)米国原油の輸出量を日量100万バレルに拡大し、(3)それによって米国原油の在庫積み増しを緩和し、在庫の再配分を可能にした。(4)そして、アジア市場では中国が中東原油の輸入を削減し、米国など増産国からの購入を増やしている。こうしたことが「原油市場の需給改善」だろうか? プラッツ社も727日(木)のリポートでこれを取り上げた。
<米国原油の輸出量(1日あたり、バレル)
出所:米エネルギー省/EIAの月間確定値
    2017年   2016年   2015年   2014年
12月        44万2千  39万2千  42万1千
11月        59万7千  32万0千  52万1千
10月        49万1千  50万0千  37万6千
09月        69万2千  41万0千  34万9千
08月        65万7千  46万1千  39万1千
07月        47万4千  54万6千  42万1千
06月        38万3千  44万5千  39万4千
05月        66万2千  52万7千  30万9千
04月  100万1千  59万1千  59万9千  28万2千
03月  83万4千  50万8千  43万8千  25万1千
02月  111万6千  37万4千  44万2千  24万7千
01月  74万6千  36万4千  49万5千  24万8千

<米国原油の中国向け輸出量(1日あたり、バレル)
出所:米エネルギー省/EIAの月間確定値
    2017年   2016年   2015年   2014年
12月        6万3千    --     --
11月        7万6千    --    1万0千
10月        1万7千    --     --
09月         --     --     --
08月        3万2千    --     --
07月        3万2千    --     --
06月         --     --     --
05月        1万6千    7千    --
04月  32万3千   1万7千    7千    --
03月  11万7千    --     --     --
02月  34万2千   1万7千    --     --
01月   6万5千    --     --     --

●米国原油のアジア向け輸出
(@) 前年同期と比較して、中国は中東原油の購入量を減らしている。サウジアラビアからの輸入も減少した。中国は原油の中東依存を削減し、多角化を目指している可能性が高い。
(A) 一方、中国のアンゴラ原油の輸入量は増加した。中国は、ロシア、アンゴラ原油を輸入し、サウジアラビアはその次になった。
(B) 中国の米国原油の輸入量は「6月=109万トン」と伝えられた。ロシアやアンゴラなどに比べると量は少ないが、前年対比の伸び率は大きい。中国石油会社は、本年後半も米国原油の輸入量を拡大する可能性が高い。
(C) サウジアラビアなど中東産油国がアジア向けタームの供給を削減し、割高な販売政策を追求するなら、アジア諸国は輸入を多角化し、米国原油の購入を増やす。中東産油国は、アジア市場のシェアを低下させる公算が大きい。
●本日のドバイ原油
本日731日(月)は、ブレント原油(ICE)期近9月限の最終取引日です。商いの中心は「ブレント原油10月限」に移っています。同時に、アジア市場のマーカー原油である「オマーン原油」および「ドバイ原油」のスポット価格の1カ月間の平均値は、本日31日(月)の取引で確定します。本日の為替は「1ドル=110.35円」で計算します。おおざっぱな目安です。
限月               円貨換算(110.35円)
東京ドバイ原油07月限  $50.40  34,980円/KL
東京ドバイ原油08月限  $50.75  35,220円/KL  +430円高
東京ドバイ原油09月限  $50.87  35,310円/KL  +430円高
東京ドバイ原油10月限  $50.97  35,370円/KL  +370円高
東京ドバイ原油11月限  $51.07  35,440円/KL  +400円高
東京ドバイ原油12月限  $51.17  35,510円/KL  +460円高


原油安=あたらしい普通の相場

2017718日(火曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3492
●国際原油取引の指標=北海原油の余剰感
国際原油取引の指標はブレント原油です。まず現状の確認からはじめます。
[1] 金融市場の投資資金(ファンド)の一部が6月第2週から第3週に売りを増やしたことで取組内部要因が一方向に傾き、その取組整理が内部要因の連鎖反応をともなって進展した。ブレント原油期近9月限は6月最終週に「45ドル」から反発した。
[2] 石油商社など当業者は、常に「原油市場の先高観」を思惑している。石油会社は「先行きの需給は引き締まる」ことを「メインシナリオ」にしており、ブレント原油が内部要因主導に「45ドル」から反発すると足もとの余剰原油を買い上げ、タンカーを使った洋上備蓄を拡大させた。当社では、6月最終週からの原油反発は(@)先物市場の内部要因の連鎖反応だけでなく(A)当業者の先高観の思惑による仮需(=洋上備蓄)を含んでいると推測してお伝えしました。
[3] 今朝のロイターでは、北海原油地域(in the North Sea region)でタンカーを使った洋上備蓄はここ1年間で最大の「1400万バレル」に増加し、それがさばけていないと伝えた。現在のブレント原油で、9月限、10月限、11月限、12月限、1月限など各限月の価格差は、それぞれ26セント、32セント、29セント、27セントに過ぎない。石油商社が足もとの余剰原油をタンカーを使った洋上備蓄に吸い上げても、各限月の価格差が「2030セント」程度では儲けを出すのは容易ではないと思います。原油先物の各限月の価格差が拡大しなければ、備蓄は重荷になる可能性があります。
[4] 当社では「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の<期近の中心限月の価格差>が、かつてのように「3ドル」に拡大することはないと考えています。北海原油で洋上備蓄が増加し、さばけていないのであれば、ブレント原油の上ザヤが一方向に買われる可能性は低い。原油は潤沢な供給が続いているので、先高観の思惑で買っても<小相場>にとどまり、戻りは重い。当社では、2018年に向けて<あたらしい普通の相場>を追求します。
●円安を是正する
為替(ドル円)については、711日(火)の「日本経済新聞」に「一段の円安進行」の記事が出たことは、<市場人気の変化>を表わすものであった。当社では711日(火)以降、再び<米国債利回りとドル円>を指標にして<円安の是正>を追求しています。<円安を是正する第2段階>を開始するためには、市場テーマを<低成長と低インフレ>に持っていく必要があります。そのなかにおいて<原油安>の果たす役割は大きい。原油も為替も、物事が必要する時間と共に進んでいくことが大切です。
●「ブレント」と「WTI」の価格差
720日以降は「ブレント原油10月限」と「ニューヨーク9月限」を基準にします。
日付 ブレント9月限 ニューヨーク8月限 価格差
7/17    48.42    46.02      2.40
7/14    48.91    46.54      2.37
7/13    48.42    46.08      2.34
7/12    47.74    45.49      2.25
7/11    47.52    45.04      2.48
7/10    46.88    44.40      2.48
7/07    46.71    44.23      2.48
7/06    48.11    45.52      2.59
7/05    47.79    45.13      2.66
7/03    49.68    47.07      2.61
6/30    48.77    46.04      2.73
6/29    47.63    44.93      2.70
6/28    47.54    44.74     
2.80
6/27    46.92    44.24      2.68
6/26    46.04    43.38      2.66

●本日718日(火)のドバイ原油
本日718日(火)の試算は「1ドル=112.60円」で計算します。
限月               円貨換算(112.60円)
東京ドバイ原油07月限  $46.88  33,200円/KL
東京ドバイ原油08月限  $47.35  33,530円/KL  -220円安
東京ドバイ原油09月限  $47.60  33,710円/KL  -220円安
東京ドバイ原油10月限  $47.85  33,890円/KL  -120円安
東京ドバイ原油11月限  $48.05  34,030円/KL  -150円安
東京ドバイ原油12月限  $48.25  34,170円/KL  -100円安


円安の行き過ぎを是正する

2017711日(火曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3488
ようやく、本日711日(火)の「日本経済新聞」(朝刊3面、総合2)に「円安」記事が掲載された。本日11日(火)の「日本経済新聞」で「一段の円安」記事が掲載されたことは、すでにマーケットが変化したことを表わしています。米国債相場や外為(ドル円)の内部要因の調整も進展したと推測すると、ここから再び<米国債利回り>を指標にして、円安の行き過ぎを是正していくことができると思います。
●「日本経済新聞」に「一段の円安進行」記事
[1] 当社「日報」で、<市場の雰囲気の変化>をお伝えしたのが、622日(木)の「日報」石油(2)でした。「日本経済新聞」は622日(木)の朝刊19面「マーケット総合」で「円高シナリオ」に言及した。「日本経済新聞」と言えば、年がら年中、「アベノミクス」や「円安」を繰り返しているのが普通なのに、突如「円高シナリオ」に言及したことは驚きであった。それは、いつの間にか、市場の「雰囲気」が円高に傾いたことを告げるものであった。
[2] 「日本経済新聞」は先週76日(木)にも、朝刊19面のマーケット総合でも「将来の円高リスク」を強調した。曰く、「日銀の次期総裁をめぐる思惑が相場に反映され始めた。きっかけは自民党が惨敗した東京都議選だ。市場は半年〜1年先に円高が進むシナリオをリスクとして意識し始めた。水面下で為替変動のマグマがたまっている。」 このように622日(木)〜76日(木)の2週間、「日本経済新聞」は「円高シナリオ」を打ち出した。年がら年中「円安」を唱えている万年「円安論者」が622日(木)〜76日(木)の2週間、突如、「円高リスク」に言及したわけです。
[3] そして、ようやく今朝11日(火)の「日本経済新聞」で「昔ながらの円安論者」に先祖返りした。「一段の円安進行は先週末に発表された6月の米雇用統計が起点だ。市場では今後も穏やかな円安基調が続くとの見方が多い。」と解説した。「日本経済新聞」は市場の雰囲気に追随しているので、「日本経済新聞」の変化は「市場の気分」とか「雰囲気」の変化を表している。米国債相場や外為相場の内部要因の調整も進展した可能性が高いので、ここから再び<米国債利回りとドル円>を指標にして<行き過ぎた円安の是正>を追求します。
※われわれは、迷いながら、葛藤のなかで決断します。矛盾とか、ジレンマとか、そういう葛藤のなかで、将来に向けた決断をします。「日本経済新聞」の記者が、後追いで、要領よく話をまとめても、市場で消化されたあとのカスに葛藤はありません。経験的に言って、「日本経済新聞」が記事にしたときは真実から遠のいています。
●行き過ぎた円安は是正しなければならない
「日本経済新聞」は市場の雰囲気に追随しているので、「日本経済新聞」の変化は「市場の気分」とか「雰囲気」の変化を表しています。本日11日(火)の「日本経済新聞」で「一段の円安」記事が掲載されたことは、すでにマーケットが変化したことを表わしており、米国債相場や外為(ドル円)の内部要因の調整も進展した可能性が高い。当社「日報」では、ここから再び<米国債利回り>を指標にして<行き過ぎた円安の是正>を追求します。<円安の行き過ぎを是正する第2段階>を開始するためには、市場テーマを<低成長と低インフレ>に戻していく必要があります。そのために<原油安が果たす役割>が大きい。
●本日711日(火)のドバイ原油
そうした観点から、本日711日(火)朝の為替はまず「1ドル=114.25114.00円」と想定して試算します。「日本経済新聞」に見るように、今週の市場人気は「円安」に傾いていると思います。
限月               円貨換算(114.20円)
東京ドバイ原油07月限  $45.60  32,750円/KL
東京ドバイ原油08月限  $45.98  33,020円/KL  +150円高
東京ドバイ原油09月限  $46.24  33,210円/KL  +180円高
東京ドバイ原油10月限  $46.45  33,360円/KL  +280円高
東京ドバイ原油11月限  $46.66  33,510円/KL  +240円高
東京ドバイ原油12月限  $46.86  33,660円/KL  +230円高

●わが国石油会社の購入原油の基準とCIF予想
日付    オマーン ドバイ  為替   円貨/KL換算  CIF参考値
7月11日(火)
45.60 45.60  114.20円 32,750円/KL → 34,750円/KL
7月10日(月) 45.31 45.30  114.17円 32,530円/KL → 34,530円/KL
7月07日(金) 45.98 45.95  113.28円 32,750円/KL → 34,750円/KL
7月06日(木) 47.21 47.11  113.04円 33,530円/KL → 35,530円/KL
7月05日(水) 48.45 48.31  113.08円 34,410円/KL → 36,410円/KL
7月04日(火) 48.35 48.34  113.21円 34,420円/KL → 36,420円/KL
7月03日(月) 47.80 47.70  112.22円 33,700円/KL → 35,700円/KL


「ブレント/WTI」が縮小方向に反転

201775日(水曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3484
国際原油取引の指標は「ブレント原油」です。「ブレント」と「WTI」の価格差が縮小に反転すると、内部要因の連鎖反応が一巡してきたことを示唆します。
<「ブレント」と「
WTI」の価格差
日付 ブレント9月限 ニューヨーク8月限 価格差
7/03    49.68    47.07      2.61
6/30    48.77    46.04      2.73
6/29    47.63    44.93      2.70
6/28    47.54    44.74     
2.80
6/27    46.92    44.24      2.68
6/26    46.04    43.38      2.66
6/23    45.75    43.01      2.74
6/22    45.41    42.74      2.67
6/21    45.05    42.53      2.52
6/20    46.25    43.51      2.74
6/19    47.13    44.43      2.70
6/16    47.63    44.97      2.66
6/15    47.19    44.68      2.51
6/14    47.29    44.93      2.36

(@) 「ブレント原油期近9月限」は「48ドル」以上に戻していること。
(A) 「ブレント原油期近9月限」と「ニューヨーク(WTI)期近8月限」の価格差は「2ドル80セント」以上には拡大していないこと。
原油市場の地合いを調べるために「ブレント」と「WTI」の価格差を見ています。「ブレント原油期近9月限」と「ニューヨーク(WTI)期近8月限」の価格差は、628日(水)に「2ドル80セント」にひらいたあとは、それ以上拡大していません。むしろ、628日(水)以降は(a)ナイジェリアの「ボニーライト原油」の不可抗力条項の解除、(b)リビアの原油生産が日量100万バレルに増加したことによって「ブレント原油期近=48ドル」以上の上値は重くなり、内部要因の連鎖反応が一巡してくると「ブレント」と「WTI」の価格差は縮小方向に反転し、地合いは軟化すると考えています。引き続き確かめます。
●原油増産
(@)ナイジェリアのシェルは現地628日(水)12時、「Trans Niger Pipeline」修復によって「ボニーライト原油」の不可抗力条項を解除した。同パイプラインは盗掘による原油漏れで68日に閉鎖していた。ナイジェリアの原油生産は「フォルカドス原油」や「ボニーライト原油」の不可抗力条項が解除されたことで日量200万バレルに増加するとみられる。
(A)リビアの石油関係者は630日(金)、同国原油生産が「日量1012千バレル」に増加したと語った。リビア国営石油(NOC)は「7月末までに日量100万バレルに引き上げる」ことを目標にしていた。
OPEC crude oil production based on secondary sources
OPEC加盟国   6-7月(17)  5月(17)  4月(17)  3月(17)  2月(17) 

サウジアラビア       994万0千 993万8千 990万5千 979万7千
アラブ首長国連邦      288万5千 290万3千 290万9千 292万5千
クウェート         207万5千 270万5千 270万2千 270万9千
カタール           61万5千  61万3千  61万2千  62万2千
イラク           442万4千 437万9千 442万5千 441万4千
イラン           379万5千 379万1千 379万2千 381万4千
リビア      
100万 ←  73万0千  55万2千  61万2千  66万9千
ナイジェリア   
200万 ← 168万0千 150万6千 145万6千 160万8千
アンゴラ          161万3千 166万7千 159万9千 164万1千
アルジェリア        105万9千 104万9千 105万1千 105万3千
ガボン            20万4千  20万5千  20万2千  19万4千
エクアドル          52万8千  52万5千  52万5千  52万6千
ベネズエラ         196万3千 197万0千 198万2千 198万7千
合計            3213万9千 3180万3千 3177万0千 3195万8千

●原油の洋上備蓄増加
原油相場は「ブレント原油期近=45ドル」水準から反発した。当社「日報」では、当面の原油の売りの目標が「ブレント原油=45ドル」であっても、「ブレント」と「ニューヨーク」(WTI)の価格差が拡大しているときは売りに利を入れて調整し、相場の様子を見ておくほうがよいとお伝えしてきたので、この反発に不思議な要素はありません。
[1] 先物市場では、買ったものは転売しなければならず、売ったものは買い戻さなければならない。市場の思惑人気が一方向に傾いたあとは、<内部要因の連鎖反応>によって是正することが多い。先週の原油反発はそれだけではなかった。原油先物が「ブレント原油=45ドル」から反発すると、石油商社など当業者は先高観を描いて原油備蓄を積み増した可能性が高い。なぜなら、石油会社は「2016年」も「2017年」も、常に先高観の思惑を「メインシナリオ」にしているので、原油先物が反発すると「底入れ」と解釈し、「仮需」の思惑を台頭させ、足もとの備蓄量の積み増しに動くからです。
[2] 石油会社が先高観を思惑し、備蓄向けに足もとの余剰原油を吸い上げると、一時的に需給がタイトになり、先物市場の<内部要因の連鎖反応>をさらに推し進めることがあります。当社にはハッキリとしたデータがありませんが、先週の原油相場から推測すると、石油会社がタンカーをつかった洋上備蓄に動き、足もとの余剰原油を先高観の思惑で吸い上げた可能性が高い。原油先物における<内部要因の連鎖反応>に加えて、石油会社による<洋上備蓄の積み増し>が期近の地合いを引き締めた可能性が高い。
[3] 金融市場の投資資金(ファンド)の一部は6月第2週から第3週に売りを増やした。それによって一方向に傾いた内部要因は互いに連鎖反応を繰り返して取組整理を進展させる。原油先物が内部要因主導に戻すと、石油会社は「先高観の思惑」を再燃させ、足もとの余剰原油を買い上げ、タンカーを使った洋上備蓄を拡大させて「仮需」を積み上げる。(@)原油先物の内部要因の連鎖反応と(A)当業者の先高観の思惑による仮需が一巡すると、「ブレント」と「WTI」の価格差は縮小方向に反転します。
●わが国石油会社の購入原油の基準とCIF予想
日付    オマーン ドバイ  為替   円貨/KL換算   CIF参考値
7月05日(水) 48.45 48.31  113.08円 34,410円/KL → 36,410円/KL
7月04日(火) 48.35 48.34  113.21円 34,420円/KL → 36,420円/KL
7月03日(月) 47.80 47.70  112.22円 33,700円/KL → 35,700円/KL

※ドバイ646.472ドル、1j=110.92円、最終決済価格32,420/KL


市場内部の連鎖反応

2017629日(木曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3480
米エネルギー省/EIAが昨夜発表した「617日〜623日」の「石油統計」では、米国の原油生産が前週比1日あたり10万バレル減少した。大手メディアのなかには「米国原油生産が日量10万バレル減少したことが原油戻りの要因」と説明するところがあった。
●先週の落ち込みについて
[1] 米国における617日〜623日の原油生産は、アラスカで「日量45千バレル」、米国本土48州で「同55千バレル」それぞれ減少した。アラスカ原油の落ち込みは夏季メンテナンスによるもので、7月も「日量40万バレル」あたりで推移する可能性が高い。
週(期間)    米国の原油生産  そのうちアラスカ原油
06/17-06/23   925万0千バレル   
44万0千バレル
06/10-06/16   935万0千バレル   
48万5千バレル
06/03-06/09   933万0千バレル   
49万0千バレル
05/27-06/02   931万8千バレル   
50万3千バレル
05/20-05/26   934万2千バレル   
50万7千バレル
05/13-05/19   932万0千バレル   
50万5千バレル
05/06-05/12   930万5千バレル   
51万0千バレル
04/29-05/05   931万4千バレル   
53万1千バレル
04/22-04/28   929万3千バレル   
52万6千バレル
[2] 米国本土48州では「前週比日量55千バレル」減少したが、これは主として熱帯低気圧「シンディ」によってメキシコ湾の原油生産が影響を受けたとの指摘があった。「617日〜623日」の米国原油生産の減少は、(@)その約半分がアラスカ原油のメンテナンス、(A)残り半分が米メキシコ湾の天候要因と推測します。これらの要素は、物事に必要な時間が経過すれば復帰します。
[3] 米国におけるエネルギー増産と輸出拡大は、将来にむけたトレンドとして継続している。米トランプ政権は、地球温暖化対策の国際的な取り決めであるパリ協定から離脱し、米国のエネルギー生産と輸出を国策として追求している。メンテナンスや天候要因による落ち込みがあっても、米国エネルギー産業の増産と輸出拡大はトレンドとして継続しているので、「米国エネルギー生産の縮小」と思惑することはできません。現在の原油戻りについて「米国原油生産の落ち込み」で説明するのは間違っています。
●当社の立場と意見
[1] 当社「日報」では、(@)ブレント原油期近「45ドル」を売りの目標として追求しながらも、(A)「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)期近の価格差が拡大しているときは<幾分か戻す>可能性を想定し、(B)売り建玉を調整しておくことをお奨めしました。国際指標である「ブレント原油」が「ニューヨーク」(WTI)に対する上ザヤをひろげて価格差が拡大しているときは、基本的な考え方として新規売りは奨められないと記してきました。われわれは物事が必要する時間を考慮に入れて、市場に臨む必要があります。相場で需給を織り込むだけでなく、物事が必要とする時間と共に進む必要があります。
[2] 先物市場における売買の基本原理は、買ったものは転売しなければならず、売ったものは買い戻さなければならないことです。「欲」で仕掛けても、「恐怖」で手仕舞いさせられる。こうした取組内部要因にも注意を向ける必要があります。こうした「欲」と「恐怖」の連鎖は原油相場だけでなく、外為市場でよく発生します。欧州の金融・経済見通しをめぐって悲観人気が増えると、多くの市場人気は「ユーロ売り」に追随するようになります。「ユーロ」を売り、さらに「ユーロ」の戻りを追いかけて売ると、市場内部に回転の利かない「ユーロ売り」がかさみ、「材料」を手掛かりに売れば売るほど地合いが硬化し、売っては踏みあげるという循環に陥ります。買いの連鎖反応が拡大しているときは、買いの勢いが猛威をふるいます。しかし、売りの踏みあげが一巡したときには、もはや連鎖反応の相手がいなくなります。それまでの騰勢が霧散し、市場は落ち着き、今度は買えば買うほどその買いが売り圧力に転化します。
[3] 原油が戻していることと 米国原油生産が減少したこととは、まったく別の要因です。先物市場では、買ったものは転売しなければならず、売ったものは買い戻さなければならない。市場内部に連鎖反応が続いているときは、そのなかに飛びこんでいくことはない。われわれが売ったり買ったりしても、どうなるものでもありません。相場にまかせておけばよいと思います。
●当社では「ブレント」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差を通して、内部要因の進捗を見ています。
「ブレント」が「WTI」に対する上ザヤを「3ドル」に向けて拡大しているときは、市場内部に買い圧力が底流しているので、地合いは堅いと推測しています。しかし、「ブレント」が「WTI」に対する上ザヤを買い上げても、「4ドル」「5ドル」の価格差にひらくことはない。 原油も穀物も、商品相場は潤沢な供給によって安定しているからです。「ブレント」と「WTI」の価格差の拡大と縮小は一つの運動です。市場内部で連鎖反応の相手がいなくなると、価格差の伸縮は反転します。先回りせずに、目の前の動きを見ることが大事です。<あたらしい普通の相場>は来年(2018)に続くと考えています。
<「ブレント」と「WTI」の価格差
日付 ブレント9月限 ニューヨーク8月限 価格差
6/28    47.54    44.74      2.80
6/27    46.92    44.24      2.68
6/26    46.04    43.38      2.66
6/23    45.75    43.01      2.74
6/22    45.41    42.74      2.67
6/21    45.05    42.53      2.52
6/20    46.25    43.51      2.74
6/19    47.13    44.43      2.70
6/16    47.63    44.97      2.66
6/15    47.19    44.68      2.51
6/14    47.29    44.93      2.36
6/13    49.05    46.67      2.38
6/12    48.64    46.32      2.32
6/09    48.53    46.07      2.46
6/08    48.26    45.89      2.37
6/07    48.43    45.98      2.45
6/06    50.42    48.34      2.08
6/05    49.81    47.58      2.23

●米国原油増産と需給
出所: 米エネルギー省/EIA
単位: 1日あたりバレル
      ┏━━━━━━━━━━━━┓  ┏━━━━━━━━━━━┓
週    米国原油生産 原油輸入 供給合計 原油処理量 原油輸出 需要合計
06/17-06/23 925万0千 801万6千 1726万6千 1689万0千 52万8千 1741万8千
06/10-06/16 935万0千 787万6千 1722万6千 1715万2千 51万7千 1766万9千
06/03-06/09 933万0千 802万5千 1735万5千 1725万6千 72万2千 1797万8千
05/27-06/02 931万8千 834万1千 1765万9千 1722万7千 55万7千 1778万4千
05/20-05/26 934万2千 798万5千 1732万7千 1751万0千 130万3千 1881万3千
05/13-05/19 932万0千 829万4千 1761万4千 1728万1千 62万5千 1790万6千
05/06-05/12 930万5千 859万0千 1789万5千 1712万2千 108万6千 1820万8千
04/29-05/05 931万4千 762万0千 1693万4千 1675万9千 69万3千 1745万2千
04/22-04/28 929万3千 826万4千 1755万7千 1717万7千 53万8千 1771万5千
04/15-04/21 926万5千 891万2千 1817万7千 1728万5千 115万2千 1843万7千
04/08-04/14 925万2千 781万0千 1706万2千 1693万8千 56万5千 1750万3千
04/01-04/07 923万5千 787万8千 1711万3千 1669万7千 68万9千 1738万6千
03/25-03/31 919万9千 785万0千 1704万9千 1642万9千 57万5千 1700万4千
03/18-03/24 914万7千 822万4千 1737万1千 1622万6千 101万0千 1623万6千
03/11-03/17 912万9千 830万7千 1743万6千 1580万1千 55万0千 1635万1千
03/04-03/10 910万9千 704万5千 1615万4千 1547万2千 71万7千 1618万9千
02/25-03/03 908万8千 815万0千 1723万8千 1549万2千 89万7千 1638万9千
02/18-02/24 903万2千 758万9千 1662万1千 1566万4千 72万1千 1638万5千


来年に続いていく普通の相場

2017622日(木曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3475
●当社の立場と意見
[1] 米国で原油増産が続いている。原油増産だけでなく、米国の原油輸出および石油製品輸出も拡大している。米国の石油製品輸出の増加は、原油処理量も押し上げている。原油や鉱物資源、そして穀物などは、2000年代の「資源エネルギー・ブーム」や「コモディティ・バブル」を通して生産能力が著しく拡大しており、国際商品の潤沢な供給は商品市場を安定させている。
[2] 当社では、昨年(2016)の相場も、本年(2017)の相場も、普通の相場と考えています。石油も穀物も、商品市場は潤沢な供給によって安定しています。余裕をもって、長期にわたる<あたらしい普通の相場>に臨んでいけばよいわけで、「ココしか売るときがない」とか「ココしか買うときがない」というような相場ではありません。<あたらしい普通の相場>が来年(2018)にも続いていくので、その都度適当に、余裕を失わないようにしておけばOKです。
[3] 当社「日報」では、(@)ブレント原油期近「45ドル」を売りの目標として追求しながらも、(A)「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)期近の価格差が拡大しているときは<幾分か戻す>可能性を想定し、売り建玉を調整しておくことをお奨めしました。国際原油取引の指標である「ブレント原油期近=45ドル」が当面の売りの目標であっても、「ブレント」と「WTI」の期近の価格差が拡大しているときは、売りに利を入れて建玉を管理し、無理をすることはないとお伝えしています。
●米国の原油生産と輸出入、原油処理量
米エネルギー省/EIAの「石油統計」について、「日本経済新聞」など多くのメディアは「在庫発表」と伝えている。しかし、米国の「石油統計」から原油生産や原油輸出入、そして石油製品の輸出入を無視し、「在庫」の増減だけを見てもどんな意味があるのだろうか?
[1] ベネズエラの独立メディア「CaracasChronicles」の日本語担当をしている野田香奈子さんは、日本貿易振興機構(ジェトロ)のカラカス事務局長、松浦健太郎氏に対して、「トイレットペーパーの芯からベネズエラを覗いている」と批判した。「うちの3歳児が好きな遊びに、トイレットペーパーの芯を望遠鏡みたいにして覗くことがあります。芯の穴から覗くと、周囲は普段と異なって見える。松浦氏の論法はこれと同じです。狭い局面を切り取って見れば、外国メディアが伝えるベネズエラとは異なって見えるでしょう。でも、こんなものを展望とは言いません。現在のように情報が錯綜する困難な状況において、できる限り正確な情報を政府内外から入手し、イデオロギーに囚われない視点から分析し、少しでも先を見通すことはクリティカルな課題です。個人の主義思想によって情報を意図的に取捨選択し、現実の解釈を歪めるような人はお呼びでありません。」
[2] 同じことが「米国石油統計」についても言える。「日本経済新聞」は「原油在庫」という「狭いトイレットペーパーの芯」からのぞき込み、すべてを勝手気儘(かってきまま)に解釈する。米国の原油輸出によって米国在庫が減少したとき、それを「OPEC加盟国などによる協調減産の効果」などと解説した。われわれは「米国原油在庫の増減」について、どういう増え方をしたのか、どういう減り方をしたのか、包括的にそのプロセスと趨勢を見る必要があります。
<米国原油増産と需給
出所: 米エネルギー省/EIA
単位: 1日あたりバレル
      ┏━━━━━━━━━━━━┓ ┏━━━━━━━━━━━┓
週    米国原油生産 原油輸入 供給合計 原油処理量 原油輸出 需要合計
06/10-06/16 935万0千
787万6千 1722万6千 1715万2千 51万7千 1766万9千
06/03-06/09 933万0千
802万5千 1735万5千 1725万6千 72万2千 1797万8千
05/27-06/02 931万8千
834万1千 1765万9千 1722万7千 55万7千 1778万4千
05/20-05/26 934万2千
795万5千 1732万7千 1751万0千 130万3千 1881万3千
05/13-05/19 932万0千
829万4千 1761万4千 1728万1千 62万5千 1790万6千
05/06-05/12 930万5千
859万0千 1789万5千 1712万2千 108万6千 1820万8千
04/29-05/05 931万4千
762万0千 1693万4千 1675万9千 69万3千 1745万2千
04/22-04/28 929万3千
826万4千 1755万7千 1717万7千 53万8千 1771万5千
04/15-04/21 926万5千
891万2千 1817万7千 1728万5千 115万2千 1843万7千
04/08-04/14 925万2千
781万0千 1706万2千 1693万8千 56万5千 1750万3千
04/01-04/07 923万5千
787万8千 1711万3千 1669万7千 68万9千 1738万6千
03/25-03/31 919万9千
785万0千 1704万9千 1642万9千 57万5千 1700万4千
03/18-03/24 914万7千
822万4千 1737万1千 1622万6千 101万0千 1623万6千
03/11-03/17 912万9千
830万7千 1743万6千 1580万1千 55万0千 1635万1千
03/04-03/10 910万9千
704万5千 1615万4千 1547万2千 71万7千 1618万9千
02/25-03/03 908万8千
815万0千 1723万8千 1549万2千 89万7千 1638万9千
●<あたらしい普通の相場>として定着させること
振り返って2月か3月頃、知り合いから為替を尋ねられることが多かった。会うたびに「1ドル=120円へ行くのか」と聞かれた。世界の潜在成長率が低下し、米国でも長期債(10yr)利回りが「2.452.50%」をメドに抑えられるとき、「1ドル=120円はない」と答えてきた。「1ドル=111109円」に向かうと予想してきた。そして、現在では知り合いから為替について尋ねられることもなくなった。今朝の「日本経済新聞」を見れば朝刊19面の「マーケット総合」で「円高シナリオ」に言及している。市場の雰囲気はいつの間にか、すっかり変わっているわけです。市場の雰囲気とか気分は反省もなく、いつの間にか変わっていることに注意しなければならない。
[1] わが国では、外為市場を「相場」として分析するのではなく、「円安=善」「円高=悪」という「善悪の価値観」で論じられることが多い。物事の「プロセス」とか「進化」とかを「善悪の価値観」に重ねて論じられる。
[2] 自然法則とか、物事の進化は、「善悪の価値観」とはまったく関係がありません。「カトリックも共産主義者もドグマによって議論している。この人たちが正しいと判断するのは、議論の前提を正しいと判断するからであって、事実に合う結果が導き出されるからではない。」 ビッグバンで始まった宇宙創造と進化の歴史は、「善悪の価値観」の問題ではない。「日本経済新聞」は「円安=善」のバイアスで伝えるのが普通であるが、今朝はどういうわけか「円高シナリオ」に言及している。
[3] 当社では、「善悪の価値観」とか、あるいは「市場の雰囲気」でシナリオを描くのではなく、事実にもとづいて、市場テーマの形成の問題として<円安の行き過ぎの是正>を追求しています。本年(2017)の第1段階で<111-109円>を達成したあと、412日からは<第2段階に移行する前の幕間のインターバル>とお伝えしています。<円安の行き過ぎを是正する第2段階>を開始するためには、市場テーマを<低成長と低インフレ>に戻していく必要があります。金利も為替も原油も、市場全体を<あたらしい普通の相場>して定着させなければならない。
●本日の原油相場
<わが国石油会社の購入原油の基準とCIF予想
本日622日(木)は、朝の試算です。
日付    オマーン ドバイ 東京仲値 円貨/KL換算   CIF参考値
6月22日(木)
43.70 43.55  111.14円 30,490円/KL → 32,490円/KL
6月21日(水) 44.47 44.32  111.38円 31,100円/KL → 33,100円/KL
6月20日(火) 45.76 45.65  111.77円 32,130円/KL → 34,130円/KL
6月19日(月) 45.80 45.60  111.03円 31,910円/KL → 33,910円/KL

<ドバイ原油(TOCOM
為替は「1ドル=111.14円」で試算します。
限月               円貨換算(111.14円)
東京ドバイ原油06月限  $43.55  30,440円/KL
東京ドバイ原油07月限  $43.90  30,690円/KL  
-260円安
東京ドバイ原油08月限  $44.15  30,860円/KL  
-420円安
東京ドバイ原油09月限  $44.39  31,010円/KL  
-560円安
東京ドバイ原油10月限  $44.63  31,200円/KL  
-560円安
東京ドバイ原油11月限  $44.85  31,350円/KL  
-560円安


原油の「戻り」の様子を見ること

2017616日(金曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3471
●原油の「戻り」について
当社「日報」では、先週木曜日(68日)に、(@)ブレント原油期近「45ドル」を売りの目標として追求しながらも、(A)「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)期近の価格差が拡大したので、このあと<幾分か戻す>可能性を想定し、(B)売り建玉を調整しておくことをお奨めしました。国際指標である「ブレント原油」が「ニューヨーク」(WTI)に対する上ザヤをひろげて価格差が拡大しているときは、基本的な考え方として、新規売りは奨められません。
[1] 国際原油取引の指標である「ブレント原油期近=45ドル」が当面の売りの目標であっても、「ブレント」と「WTI」の期近の価格差が拡大しているときは、利を入れる売りには利を入れて建玉を管理し、相場の様子を見ておくほうがよいと思います。勝負しなければならないときは、果敢に臨むことが必要ですが、そうではないときは、無理をすることはありません。
[2] 昨日615日(木)のアジア市場で、中東原油は「ブレント」に対して軟化した。アジア市場の「ドバイ原油」は「ブレント」に対する下ザヤをひろげて下げた。現在の原油市場で強張っているのは「ブレント原油」だけで、「WTI」も「ドバイ」も下げている。それでも「ブレント」との価格差が拡大しているときは、物事が必要としている時間の進捗を考慮に入れて、新規売りは止めておカネを管理し、余裕を失わないにしておくのがよいと思います。当社では、原油相場は<幾分か戻す>可能性があると考えています。
[3] 「ブレント期近=45ドル」を見当に、売りを追求しますが、「ブレント原油期近=45ドル」あるいは「43ドル」は、近いようで、難しい上下があると考えています。このため、「ブレント」と「WTI」の期近の価格差が拡大しているときは、売り建玉を調整し、新規売りは止めて様子を見ることをお奨めしています。原油市場における市場間の価格差は一つの運動です。価格差が拡大しているときは、再び「3ドル」にひらく力があるのか、それとも「2ドル台前半」で歯止めがかかるのか、確かめる時間が必要です。
<ブレントとWTIの期近の価格差
日付 ブレント8月限 ニューヨーク7月限 価格差
6/15    46.92    44.46      2.46
6/14    47.00    44.73      2.27
6/13    48.72    46.46      2.26
6/12    48.29    46.08      2.21
6/09    48.15    45.83      2.32
6/08    47.86    45.64      2.22
6/07    48.06    45.72      2.34
6/06    50.12    48.19     
1.93
6/05    49.47    47.40      2.07
6/02    49.95    47.66      2.29
6/01    50.63    48.36      2.27
5/31    50.76    48.32      2.44
5/30    52.24    49.66      2.58
5/26    52.51    49.80      2.71
5/25    51.77    48.90      2.87
5/24    54.24    51.36      2.88
5/23    54.41    51.47      2.94
5/22    54.11    51.13      2.98
5/19    53.76    50.67     
3.09
5/18    52.67    49.66      3.01
5/17    52.44    49.41      3.03
5/16    51.91    49.00      2.91
5/15    52.01    49.16      2.85

●わが国石油会社の購入原油の基準とCIF予想
<わが国石油会社の購入原油価格の基準とCIF予想値
●本日のドバイ原油(朝の試算)
為替は「1ドル=111.00円」を目安にします。市場間の価格差、市場内部の限月間の価格差も拡大する可能性が高い。
限月               円貨換算(111.00円)
東京ドバイ原油06月限  $45.15  31,520円/KL
東京ドバイ原油07月限  $45.75  31,940円/KL  
+170円高
東京ドバイ原油08月限  $46.04  32,140円/KL  
+230円高
東京ドバイ原油09月限  $46.30  32,320円/KL  
+330円高
東京ドバイ原油10月限  $46.57  32,510円/KL  
+350円高
東京ドバイ原油11月限  $46.80  32,670円/KL  
+390円高


原油の「戻り」(価格差)を見ること

2017612日(月曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3467
当社「日報」では、先週木曜日(68日)に、<「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の期近の価格差が拡大したので、このあと原油相場は幾分か戻す可能性がある>とお伝えしました。
●原油の「戻り」について
[1] 日本時間の67日(水)〜68日(木)朝の相場で、原油先物の「ブレント」と「WTI」の価格差が拡大し、このあと<相場が戻す>ことがわかっているとき、相場の動きに合わせて<売り建玉を調整しておく>のが当たり前です。勝負しなければならないときは、果敢に臨むことが必要ですが、そうではないときは、無理をすることはありません。
[2] 20146月以降の<あたらしい普通の相場>は、2015年、2016年に続き、本年(2017)から来年(2018)にも続いていくと考えています。「ココしか買うときがない」とか、「ココしか売るときがない」という相場ではありません。原油供給は潤沢にあるので、のらりくらりと<売りで泳いで行ければOK>です。当社では、ブレント原油期近8月限で「45ドル」あたりに下げる可能性を追求していますが、先週68日(木)からは「ブレント」と「WTI」の価格差が拡大しているので、自律反発であれ、なんであれ、<目先の相場の戻り>を示唆しています。
[3] 「ブレント」と「WTI」の期近の価格差は、原油相場の地合いを<定量的に見る>手掛かりです。「ブレント原油」が「ニューヨーク原油」(WTI)に対して上ザヤを買い、その価格差が拡大するときは、原油の地合いが強くなります。そういうときは、長い相場のなかで無理をすることはない。売り急ぐとコジれるので、物事が必要とする時間の経過にまかせてみる方がよいと思います。戻りが予想される局面では、その都度、適当に売りに利を入れ、余裕を失わないようにしておけばOKです。
●「ブレント」と「WTI」の価格差
[1] 当社では、「ブレント期近=45ドル」を見当にして売りを追求していますが、67日から「ブレント」と「WTI」の期近の価格差が拡大しているので、<幾分か戻す>可能性を想定しています。相場は長期にわたって続く。戻りを想定する局面では、その都度、売り建玉を調整し、おカネを管理しながら臨んでいけばよいと思います。
[2] 「ブレント」と「WTI」の期近の価格差拡大は、「ブレント」の上ザヤが買い直されるプロセスです。このため「WTI」よりも、「ブレント」の戻りが大きくなります。国際原油取引の指標である「ブレント」の戻りが大きくなると、アジア市場のマーカー原油である「ドバイ原油」や「オマーン原油」も押し上げられます。
[3] 「ブレント」と「WTI」の価格差の伸縮は、原油市場における一つの運動です。価格差が拡大に転じたときは、再び「3ドル」にひらく力があるのか、それとも「2ドル台前半」で価格差の拡大に歯止めがかかって揉み合うのか、確かめる時間が必要です。
<ブレントとWTIの期近の価格差
日付 ブレント8月限 ニューヨーク7月限 価格差
6/09    48.15    45.83      2.32
6/08    47.86    45.64      2.22
6/07    48.06    45.72      2.34
6/06    50.12    48.19     
1.93
6/05    49.47    47.40      2.07
6/02    49.95    47.66      2.29
6/01    50.63    48.36      2.27
5/31    50.76    48.32      2.44
5/30    52.24    49.66      2.58
5/26    52.51    49.80      2.71
5/25    51.77    48.90      2.87
5/24    54.24    51.36      2.88
5/23    54.41    51.47      2.94
5/22    54.11    51.13      2.98
5/19    53.76    50.67     
3.09
5/18    52.67    49.66      3.01
5/17    52.44    49.41      3.03
5/16    51.91    49.00      2.91
5/15    52.01    49.16      2.85


原油の「戻り」について

201768日(木曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3465
201767日(水)のブレント原油(ICE
限月           始値  高値  安値  帳入値
ブレント原油08月限(17) 49.97 50.14 47.96 48.06  
-2.06
ブレント原油09月限(17) 50.30 50.44 48.32 48.43  
-1.99
ブレント原油10月限(17) 50.59 50.68 48.62 48.72  
-1.95
ブレント原油11月限(17) 50.79 50.88 48.88 48.97  
-1.91
ブレント原油12月限(17) 50.99 51.08 49.12 49.20  
-1.87
ブレント原油01月限(18) 51.10 51.20 49.31 49.39  
-1.82
ブレント原油02月限(18) 51.23 51.23 49.50 49.54  
-1.77
ブレント原油03月限(18) 51.26 51.32 49.62 49.66  
-1.71
●本日のドバイ原油の試算値
本日68日(木)は、朝の試算です。昨夜から「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の期近の価格差が拡大したので、<幾分か戻す>可能性があります。それでも、下の値段がおおざっぱな目安です。為替は米国債利回りが上昇しており、「1ドル=110.10109.85109.60円」で揉み合うと思います。
限月               円貨換算(109.85円)
東京ドバイ原油06月限  $47.08  32,530円/KL
東京ドバイ原油07月限  $47.38  32,730円/KL  
-930円安
東京ドバイ原油08月限  $47.64  32,910円/KL  
-930円安
東京ドバイ原油09月限  $47.91  33,100円/KL  
-750円安
東京ドバイ原油10月限  $48.14  33,260円/KL  
-710円安
東京ドバイ原油11月限  $48.24  33,330円/KL  
-790円安
●原油相場の<戻り>の可能性について
(@) 当社ではブレント原油期近8月限「45ドル」あたりを追求しています。ブレント原油期近8月限で「45ドル」あたりに下げる可能性を描いています。
(A) しかし、昨夜からの原油相場では「ブレント」と「ニューヨーク原油」(WTI)の期近の価格差が拡大した。「ブレント」と「WTI」の価格差が拡大したことは、自律反発であれ、なんであれ、「目先の戻り」を示唆しています。
(B) このため、本日68日(木)の原油相場には、それぞれ<葛藤>(かっとう)があると思います。(@)ブレント原油期近8月限で「45ドル」あたりを追求したいと考えながら、(A)同時に「目先の戻り」にも備えたいとき、どうすればよいのか?こういうときは、売り建玉に適当に利を入れておけばよいと思います。
(C) 当社では、昨年(2016)の相場も、本年(2017)の相場も、来年(2018)に向けた相場も、普通の相場と考えています。商品市場は、原油も穀物も、潤沢な供給によって安定しています。「ココしか売るときがない」とか、「ココしか買うときがない」というような特別な相場ではありません。<あたらしい普通の相場>が長期にわたって続いていくので、余裕をもって、売りの目標を追求できるようにしておけばOKです。その都度、売りには適当に利を入れて臨んでいけばよいと思います。
●原油相場の地合い
当社では、原油相場の地合いについて、「ブレント原油8月限」と「ニューヨーク原油(WTI7月限」の価格差を目安にして判断しています。
(@) 「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差が拡大しているとき、原油の地合いは堅い。但し、「ブレント」と「ニューヨーク」(WTI)の価格差が拡大する場合でも、そのサヤが「3ドル」を超える水準で無制限にひろがることはありません。「ブレント」と「ニューヨーク」(WTI)の期近の価格差が「3ドル」を超えて伸びたあとは反転し、サヤは縮小に向かいます。
(A) 「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の期近の価格差が縮小しているとき、原油の地合いは弱い。522日から価格差は縮小してきた。
(B) 資源エネルギー市場では、かつての「コモディティ・バブル」を将来の推定の基準にしようとする人たちがいる。そして、金融市場には、サウジアラムコの「新規株式公開」(IPO)を焦点に思惑する人たちがいる。当社は、そういう「買いの思惑」には与しません。商品市場は原油も穀物も潤沢な供給によって安定しているので、かつての「バブル」が再来することはありません。<戻しても小相場>という観点から「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差を目安にして、原油の地合いを判断しています。「ブレント」と「WTI」の価格差が縮小しているときは、「ブレント原油期近=45ドル」を見当に売りを持続します。
(C) 昨夜からは「ブレント」と「WTI」の価格差が拡大してきた。本日68日(木)は<幾分か戻す>可能性があります。このあと原油相場は戻す可能性があるので、戻すなら戻してもよいというつもりで、売りには適当に利を入れて建玉を調整し、おカネを管理しておけばよいと思います。
<ブレントとWTIの価格差
日付 ブレント8月限 ニューヨーク7月限 価格差
6/07    48.06    45.72     
2.34
6/06    50.12    48.19     
1.93
6/05    49.47    47.40      2.07
6/02    49.95    47.66      2.29
6/01    50.63    48.36      2.27
5/31    50.76    48.32      2.44
5/30    52.24    49.66      2.58
5/26    52.51    49.80      2.71
5/25    51.77    48.90      2.87
5/24    54.24    51.36      2.88
5/23    54.41    51.47      2.94
5/22    54.11    51.13      2.98
5/19    53.76    50.67     
3.09
5/18    52.67    49.66      3.01
5/17    52.44    49.41     
3.03
●為替=「110.10109.85109.60円」
当社では、<円安の行き過ぎを是正する第2段階>は、<低成長と低インフレ>を市場テーマに打ち出すことを考えています。それによって、原油も穀物も、金利も為替も、各市場が連携して下げることができます。
(@) <円安の行き過ぎを是正する第1段階>は「111-109円」を達成したあと、<第2段階>へ移行するためには、もう一度、市場テーマを<低成長と低インフレ>に戻す必要があります。<円安の行き過ぎを是正する第2段階>では、原油市場を含む各市場で<低成長と低インフレ>が熟していくプロセスが必要です。<低成長と低インフレ>によって商品市場が安定しているとき、1970年代や2000年代のような「強気の罫線」は形成されず、弱気市場が長期化する可能性が高い。
(A) 当社は、<低成長と低インフレ>を市場テーマにしているので、(1)米10年債利回りは「2.452.50%」をメドに描いてきました。(2)原油はサウジアラビアなどが減産を実施しても、米国などは増産し、需要の伸びは失速するので、あたらしい標準に移行するとお伝えしてきました。(3)トランプ米大統領については(a)多重虚偽、(b)危険な幻想の商売、(c)現実からの逃走 という3つの要素で特徴付けました。本日68日(木)の為替は、米国債利回りの小幅上昇を背景に「1ドル=110.10109.85109.60円」で揉み合う可能性が高い。
<米国債利回りと為替(ドル円)
<円安の行き過ぎを是正する第2段階>は、<低成長と低インフレ>を市場テーマにすることによって開始すると考えています。現状は、まだ<幕間のインターバル>で揉み合っています。揉み合うときは、時間をかけて揉み合うのが良いと思います。本日8日(木)は「1ドル=110.10109.85109.60円」を目安にします。
米国債の利回り(%)      為替(ドル円)
米国日付  10年債  2年債   日本日付 東京仲値
06/07    2.18  1.32   06/08 
110.10-109.85-109.60
06/06    2.14  1.30   06/07   109.53円
06/05    2.18  1.32   06/06   110.18円
06/02    2.15  1.28   06/05   110.49円
06/01    2.21  1.28   06/02   111.63円
05/31    2.21  1.28   06/01   110.97円
05/30    2.21  1.28   05/31   110.96円
05/29    休み       05/30   111.10円
05/26    2.25  1.30   05/29   111.34円
05/25    2.25  1.30   05/26   111.79円
05/24    2.26  1.29   05/25   111.66円
05/23    2.29  1.31   05/24   111.82円
05/22    2.25  1.29   05/23   111.16円
05/19    2.23  1.28   05/22   111.54円
05/18    2.23  1.27   05/19   111.40円
05/17    2.22  1.26   05/18   111.06円
05/16    2.33  1.29   05/17   112.60円
05/15    2.34  1.31   05/16   113.77円
05/12    2.33  1.29   05/15   113.43円


低成長と低インフレ

201762日(金曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3461
本日62日(金)のアジア原油市場は、昨日のアジア終値(0830GMT)からドバイ原油が「-1ドル10セント」ほど下げて始まる可能性が高い。
<本日のドバイ原油の試算値
限月               円貨換算(111.30円)
東京ドバイ原油06月限  $49.00  34,300円/KL  
-550円安
東京ドバイ原油07月限  $49.30  34,510円/KL  
-480円安
東京ドバイ原油08月限  $49.55  34,690円/KL  
-440円安
東京ドバイ原油09月限  $49.75  34,830円/KL  
-390円安
東京ドバイ原油10月限  $49.85  34,900円/KL  
-420円安
東京ドバイ原油11月限  $49.90  34,930円/KL  
-430円安
●原油相場の地合い
「ブレント原油8月限」と「ニューヨーク原油(WTI7月限」の価格差を目安にして、原油相場の地合いを判断します。
(@)「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差が拡大しているときは、原油の地合いは堅い。但し、「ブレント」と「ニューヨーク」(WTI)の価格差が拡大する場合でも、そのサヤが「3ドル」を超える水準で無制限にひろがることはありません。「ブレント」と「ニューヨーク」(WTI)の期近の価格差が「3ドル」を超えて伸びたあとは反転し、サヤは縮小に向かいます。
(A)「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の期近の価格差が縮小しているとき、原油の地合いは弱い。522日から価格差が縮小しています。
(B)資源エネルギー市場では、かつての「コモディティ・バブル」を将来の推定の基準にしようとする人たちがいる。そして、金融市場には、サウジアラムコの「新規株式公開」(IPO)を焦点に思惑する人たちがいる。当社は、そういう「買いの思惑」には与しません。商品市場は原油も穀物も潤沢な供給によって安定しているので、かつての「バブル」が再来することはない。<戻しても小相場>という観点から「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差を目安にして、原油の地合いを判断しています。
<ブレントとWTIの価格差縮小
日付 ブレント8月限 ニューヨーク7月限 価格差
6/01    50.63    48.36      2.27
5/31    50.76    48.32      2.44
5/30    52.24    49.66      2.58
5/26    52.51    49.80      2.71
5/25    51.77    48.90      2.87
5/24    54.24    51.36      2.88
5/23    54.41    51.47      2.94
5/22    54.11    51.13      2.98
5/19    53.76    50.67     
3.09
5/18    52.67    49.66      3.01
5/17    52.44    49.41      3.03
5/16    51.91    49.00      2.91
5/15    52.01    49.16      2.85

●為替について - 米国債利回りと「ドル円」
(@)円安の行き過ぎを是正しなければならない。本年(2017)の相場では、第1段階として「1ドル=111-109円」を達成したあと、現在は第2段階に入る前に<幕間のインターバル>で揉み合っています。円安の行き過ぎを是正する第2段階を開始するためには、原油を含む各市場で、<低成長と低インフレ>の市場テーマが熟していくプロセスが必要です。
(A)揉み合うときは、時間をかけて揉み合ったほうがよい。今朝の米債券市場に動きはなく、米国債利回りも上昇していないので、基準は前日と同じです。本日62日(金)は、市場の思惑が「米雇用統計」に傾いているので、想定レンジは広めに「1ドル=111.65111.20110.75円」で考えます。
<米国債利回りと「ドル円」
米国債の利回り(%)     為替(ドル円)
米国日付 10年債  2年債   日本日付 東京仲値
06/01   2.21  1.28   06/02 
111.65-111.20-110.75
05/31   2.21  1.28   06/01   110.97円
05/30   2.21  1.28   05/31   110.96円
05/29   休み       05/30   111.10円
05/26   2.25  1.30   05/29   111.34円
05/25   2.25  1.30   05/26   111.79円
05/24   2.26  1.29   05/25   111.66円
05/23   2.29  1.31   05/24   111.82円
05/22   2.25  1.29   05/23   111.16円
05/19   2.23  1.28   05/22   111.54円

●米国の原油増産と輸出拡大
米国の原油増産についてお伝えします。以下のデータは、すべて「日量」(1日あたり/バレル)です。原油生産も原油輸入も、原油処理量も原油輸出も、すべて「1日あたり/バレル」で表示します。※青字は、当社推定値です。
<米国の原油生産(月間平均値)
米国の原油生産は、20052008年のコモディティ・バブル時期と比較して、「1日あたり+400万バレル以上」増加しています。
     2017    2016    2015    2014      2008
12月        878万0千  922万5千  949万6千 ・・ 511万2千
11月        886万3千  930万4千  930万7千 ・・ 508万6千
10月        878万5千  935万8千  923万3千 ・・ 473万8千
09月        856万7千  942万3千  904万7千 ・・ 397万9千
08月        875万5千  938万4千  887万6千 ・・ 500万6千
07月        869万1千  941万8千  881万5千 ・・ 517万8千
06月        871万1千  832万0千  871万8千 ・・ 513万8千
05月  
932万0千*  888万2千  947万2千  860万4千 ・・ 514万4千
04月  
927万7千*  894万7千  962万7千  860万5千 ・・ 515万6千
03月  909万8千  917万4千  956万6千  826万2千 ・・ 519万2千
02月  903万6千  914万7千  951万7千  821万7千 ・・ 514万7千
01月  885万8千  919万4千  937万9千  803万3千 ・・ 511万3千

<米国の原油輸出(月間平均値)
米国は本年(2017)、アジア市場(韓国や中国など)にも原油を輸出している。その輸出量は「1日あたり100万バレル」水準(1週間で700万バレル)に拡大した。米国原油の輸出は国際需給に影響を与ている。
     2017    2016    2015    2014     2008
12月         44万2千   39万2千   42万1千 ・・ 4万6千
11月         59万7千   32万0千   52万1千 ・・ 3万1千
10月         49万1千   50万0千   37万6千 ・・ 4万3千
09月         69万2千   41万0千   34万9千 ・・ 3万9千
08月         65万7千   46万1千   39万1千 ・・ 4万0千
07月         47万4千   54万6千   42万1千 ・・ 2万9千
06月         38万3千   44万5千   39万4千 ・・ 2万2千
05月  
100万0千*   66万2千   52万7千   30万9千 ・・ 1万9千
04月  
73万0千*   59万1千   59万9千   28万2千 ・・ 1万4千
03月   83万4千   50万8千   43万8千   25万1千 ・・ 2万9千
02月  111万6千   37万4千   44万2千   24万7千 ・・ 2万0千
01月   74万6千   36万4千   49万5千   24万8千 ・・ 1万2千

●米エネルギー省/EIAの「週間石油統計」について
米エネルギー省/EIAは「Weekly Petroleum Status Report」を発表している。「日本経済新聞」などは、それを「在庫統計」と伝えているが不正確な表現です。今朝の「日本経済新聞」は、次のように伝えていた。
「米エネルギー情報局(EIA)が発表した在庫統計で、原油在庫は前週比で市場予想を大きく上回って減った。輸入が減った半面、石油精製施設の稼働率が上昇した。石油輸出国機構(OPEC)加盟国などによる協調減産の効果が出始め、供給過剰が解消されるとの見方につながった。ただ、7月限は取引終了にかけて上げ幅を縮めた。トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱するかどうかを米東部時間1日午後に発表すると予定されていた。離脱すれば米石油企業が原油を増産しやすくなり、米国内の需給が緩むとの見方が浮上。発表前に原油の買い持ち高を減らす動きが進んだとの指摘があった。取引終了後にトランプ政権がパリ協定からの離脱を決めたと伝わると、原油先物は下落に転じ、48ドル前後まで水準を切り下げた。」(日本経済新聞)
これに対して、ブルームバーグの力点は異なっていた。
61日のニューヨーク原油先物市場ではWTI先物はほぼ変わらず。一時は1.7%上昇したが騰勢は続かず、引けまでに上昇分のほとんどを失った。米エネルギー情報局(IEA)の週間統計によれば、先週の米原油在庫は643万バレル減少したものの、生産が日量22000バレル増加した。SCSコモディティーズのエネルギー・デリバティブ・ブローカー、クレイトン・ロジャーズ氏は"米国の原油生産が弱材料であることは間違いない。まさにこれが相場に影響した"と述べた。」(ブルームバーグ)
<「日本経済新聞」=トイレットペーパーの芯からのぞき込む論法
ベネズエラの独立メディア「CaracasChronicles」の日本語担当をしている野田香奈子さんは、日本貿易振興機構(ジェトロ)のカラカス事務局長、松浦健太郎氏に対して、「トイレットペーパーの芯からベネズエラを覗いている」と批判した。
うちの3歳児が好きな遊びに、トイレットペーパーの芯を望遠鏡みたいにして覗くことがあります。芯の穴から覗くと、周囲は普段と異なって見える。松浦氏の論法はこれと同じです。狭い局面を切り取って見れば、外国メディアが伝えるベネズエラとは異なって見えるでしょう。でも、こんなものを展望とは言いません。現在のように情報が錯綜する困難な状況において、できる限り正確な情報を政府内外から入手し、イデオロギーに囚われない視点から分析し、少しでも先を見通すことはクリティカルな課題です。個人の主義思想によって情報を意図的に取捨選択し、現実の解釈を歪めるような人はお呼びでありません。」(野田香奈子)
同じことが、米国石油統計についても言える。「日本経済新聞」は「米国原油在庫」という「狭いトイレットペーパーの芯」からのぞき込み、すべてを勝手気儘(かってきまま)に解釈する。われわれは「原油在庫の増減」について、どういう増え方をしたのか、どういう減り方をしたのか、そのプロセスと趨勢を見る必要があります。米国原油輸出によって米国原油在庫が減少したとき、それを「OPEC加盟国などによる協調減産の効果」などと言えるだろうか? 米国の原油輸出は、国際的なバランスシートの「供給過剰の解消」だろうか?
●米国の原油増産と需給−週間速報値のデータ
(@)米エネルギー省/EIAが昨夜発表した「週間石油統計」によれば、「520日−526日」の米国原油生産は「1日あたり9342千バレル」、「昨年101日−107日」の「同8450千バレル」から「+892千バレル」増加した。そして、「520日−526日」の米国原油輸出は「1日あたり1303千バレル」と最高記録を更新した。
(A)米エネルギー省/EIAが昨夜発表した週間石油統計で米国原油在庫が減少したのは、主して(a)カナダ原油(重質油)の輸入量が減少し、(b)米国原油(軽質油)の輸出量が急増したためであった。「1日あたり1303千バレル」の米国原油輸出は、1週間で「1303千バレル×79121千バレル」(大型タンカー5隻分)です。
<米国原油増産と需給(週間速報値)
出所: 米エネルギー省/EIA
単位: 1日あたりバレル
      ┏━━━━━━━━━━━━┓ ┏━━━━━━━━━━━┓
週    米国原油生産 原油輸入 供給合計 原油処理量 原油輸出 需要合計
05/20-05/26 934万2千
795万5千 1732万7千 1751万0千 130万3千 1881万3千
05/13-05/19 932万0千
829万4千 1761万4千 1728万1千 62万5千 1790万6千
05/06-05/12 930万5千
859万0千 1789万5千 1712万2千 108万6千 1820万8千
04/29-05/05 931万4千
762万0千 1693万4千 1675万9千 69万3千 1745万2千
04/22-04/28 929万3千
826万4千 1755万7千 1717万7千 53万8千 1771万5千
04/15-04/21 926万5千
891万2千 1817万7千 1728万5千 115万2千 1843万7千
04/08-04/14 925万2千
781万0千 1706万2千 1693万8千 56万5千 1750万3千
04/01-04/07 923万5千
787万8千 1711万3千 1669万7千 68万9千 1738万6千
03/25-03/31 919万9千
785万0千 1704万9千 1642万9千 57万5千 1700万4千
03/18-03/24 914万7千
822万4千 1737万1千 1622万6千 101万0千 1623万6千
03/11-03/17 912万9千
830万7千 1743万6千 1580万1千 55万0千 1635万1千
03/04-03/10 910万9千
704万5千 1615万4千 1547万2千 71万7千 1618万9千
02/25-03/03 908万8千
815万0千 1723万8千 1549万2千 89万7千 1638万9千
02/18-02/24 903万2千
758万9千 1662万1千 1566万4千 72万1千 1638万5千
02/11-02/17 900万1千
728万6千 1628万7千 1527万1千 121万1千 1648万2千
02/04-02/10 897万7千
849万1千 1746万8千 1545万8千 102万6千 1648万4千
01/28-02/03 897万8千
937万2千 1835万0千 1589万3千 56万7千 1646万0千
●ロシアの老獪さ
<サウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」
(@)当社「日報」は、2015年からサウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」について<詰めの甘さ>を指摘してきました。サウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」は「ビジョン2030」や「サウジアラムコの新規株式公開」(IPO)などによって、米欧金融市場における人気が高い。しかし、当社では、20153月のイエメン侵攻やその後のイランとの対立を通して<危ない人だナ>と認識してきた。
(A)このような人が参謀本部で権勢をふるう陣営には参集することができません。つまり、原油の買い方になることはできません。イランやロシアはもっと老獪(ろうかい)です。イランやロシアは、サウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」を子供扱いしているのではないかと思います。
<ロシアのオレシキン経済発展相
ロシアのオレシキン経済発展相は61日(木曜日)、サンクトペテルブルクで開かれた「国際経済フォーラム」でブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、一方で、サウジアラビアの減産計画に「お付き合い」しながら、その一方で、原油40ドルでも大丈夫と強弁し、原油先物市場におけるファンドの記録的な買いに警鐘を鳴らした。ロシアは、こういうことを言うことができるのですよ。
「ロシアは、40ドル以下の原油価格水準でも永遠に生き残る準備ができている。
「(ロシアの)全てのマクロ経済政策は現在、原油価格40ドルの想定に基づいている。
そして、原油相場の上昇に賭けて、買いを積み増しているファンドには当惑していると語った。
「原油相場は1-2年以内に大幅に下落する可能性があり、それとは反対の上昇を見込んでいるファンドは大きなリスクを背負っている。


長期にわたるプロセスとして分析

2017526日(金曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3456
当社「日報」では、昨年(20169-11月にサウジアラビアが「減産計画」を打ち上げたときも、本年(2017515日に「減産計画の9カ月延長」を働きかけてきたときも、サウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」の<詰めの甘さ>を指摘して、こうした思惑には与しないとお伝えしました。
[1] サウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」は、米国にトランプ大統領が就任し、トランプ政権が発足するとそれにスリ寄り、イランとの関係について「極端な思想の上に成り立っている体制や人物と、どうやって理解しあえるのか」と発言し、対話の意味はないという考えを示した。「イランはイスラム世界を支配しようとしている。われわれはその主要な標的となっている」と述べた。その一方で、サウジアラビアは湾岸協力会議加盟国のカタールと亀裂が発生し、今週もそれが表面化している。
[2] 当社では4月から5月、中東情勢やリビア、ナイジェリア情勢だけでなく、南米ベネズエラやブラジルにも注目して調査しています。それらを要領よくまとめようとすると、とても難しい作業になるので、いまのところ、私の頭のなかに蓄積しています。今週524日(水)の「日報」で記したように、そうした作業を続けるなかで思うことは、2000年代の「資源エネルギー・ブーム」や「コモディティ・バブル」の影響の大きさです。
(@)いまだに「資源エネルギー・ブーム」や「コモディティ・バブル」を将来の推定の基準にする人たちがいる。
(A)そして、もう一つが、
2018年に予定しているサウジアラムコの「新規株式公開」(IPO)です。
[3] 中東や南米の資源国では、2000年代の「資源エネルギー・ブーム」や「コモディティ・バブル」を原資に作り上げた制度を固執する向きがある。多くの新興国で、資源エネルギー分野は国家支援の下で寡占化しているので、その構造改革は遅れる可能性が高い。
[4] サウジアラビアの「ムハンマド・サルマン副皇太子」は「ビジョン2030」「サウジアラムコの新規株式公開(IPO)」などで、米欧金融市場における評価が高い。しかしながら、サウジアラビアが北朝鮮のような制度を維持したまま構造改革が可能だろうか?昨年9-11月の「減産計画」も、本年5月に提案した「20183月まで9カ月延長計画」も、焦点はサウジアラムコのIPOにあり、サウジアラビアの単独減産がその実体と考えています。
●長期にわたるプロセス
資源国は2000年代の「資源エネルギー・ブーム」や「コモディティ・バブル」を謳歌したはずであったが、現在のブラジルやベネズエラを見ると多くが浪費された。ふいにされたチャンスや、もしかしたら実現されていたかもしれない明るい未来、そういう大切なものがドブに捨てられたあとの悲哀、そこから立ち上がらなければならないので、長期にわたるプロセスを想定して臨まなくてはなりません。
[1] 20世紀最大の物理学者の一人であるマックス・ブランクはこう述べた。「重要な科学上の革新が、対立する陣営の意見を変えさせることで徐々に達成されるのは稀(まれ)である。キリスト教徒を迫害したサウロは、奇跡的回心を遂げて使徒パウロになったが、そのようなことがそうそうあるわけではない。現実に起こることは、対立する人々が次第に死に絶え、成長しつつある次の世代が初めから新しい考え方に習熟することである。
[2] OECD鉄鋼委員会の根津利三郎氏は一昨年(2015630日のリポートで「二ケタの経済成長からその半分程度の成長率に移行するとき、需要の伸びも半減するのかといえば、そうではない。10%成長経済と5%成長経済は経済構造が全く変わってしまい、需要の伸びはゼロになるのだ。」と指摘した。
[3] 10%の高度経済成長が、6%あるいは2%の低成長に移行するとき、需要は「6%」「2%」で増加すると想定しがちだが、実際はそうではない。低成長があたらしい標準になるとき、生産国それぞれ、生産企業それぞれにとって、需要の伸びはゼロになる。そうしたことは、実際のプロセスで確かめる必要があります。
[4] リビアでは、東部のハフタル将軍の権勢が目立ち、息子をハフタル軍の高官にしている。しかし、ハフタルは「1943117日生まれ」で73歳、当社は彼の頑迷さと同時に、彼が勝つことができない衰えを感じています。
[5] 当社では、(@)2000年代の「資源エネルギー・ブーム」や「コモディティ・バブル」は終わっていること、(A)中国やロシア、ブラジルなど新興国市場の成長ダイナミクスもピークを過ぎていること、(B)二ケタの経済成長からその半分程度の成長率に低下するとき、需要の伸びはゼロになること、これらを反映するので<とても大きな過渡期>として、長期にわたるプロセスという観点で分析しています。
●わが国石油会社の購入原油価格の基準
本日526日(金)のドバイ原油を試算します。米金利指標が昨日25日からほとんど動いていないので、「1ドル=111.75111.55111.35円」を目安にします。
<本日526日(金)のドバイ原油の試算値
限月              円貨換算(111.75円)
東京ドバイ原油05月限  $50.10  33,210円/KL
東京ドバイ原油06月限  $50.35  35,390円/KL  
-2,020円安
東京ドバイ原油07月限  $50.50  35,490円/KL  
-2,040円安
東京ドバイ原油08月限  $50.65  35,600円/KL  
-2,050円安
東京ドバイ原油09月限  $50.80  35,700円/KL  
-1.950円安
東京ドバイ原油10月限  $50.90  35,770円/KL  
-1,860円安
●外為市場のドル円について

(@)<円安の行き過ぎを是正する第1段階>は、111109円を達成したあと、<第2段階>に入るまでには<幕間のインターバルがある>と想定しました。
(A)<円安の行き過ぎを是正する第2段階>は、もう一度、市場テーマを<低成長と低インフレ>に戻していかなければならない。そのためには、原油市場を含む各市場で<低成長と低インフレ>が熟していくプロセスを見る時間が必要です。当社「日報」は、<低成長と低インフレ>を市場テーマに分析しているので、米10年債利回りは「2.452.50%」をメドに描いてきました。原油はサウジアラビアなどが減産を実施しても、米国などは増産し、需要の伸びは失速するので、あたらしい標準に移行するとお伝えしてきました。トランプ米大統領については(a)多重虚偽、(b)危険な幻想の商売、(c)現実からの逃走 という3つの要素で特徴付けました。
(B)本日526日(金)の外為市場は、米金利指標が昨日からほとんど動いていないので、ドル円「111.75111.55111.35円」が目安です。現状は、<円安の行き過ぎを是正する第2段階>に入る前の<幕間のインターバル>で揉み合っています。
<米国債利回りと「ドル円」
米国債の利回り(%)     為替(ドル円)
米国日付  10年債  2年債   日本日付 東京仲値
5/25    2.25  1.30   5/26 
111.75-111.55-111.35
5/24    2.26  1.29   5/25   111.66円
5/23    2.29  1.31   5/24   111.82円
5/22    2.25  1.29   5/23   111.16円
5/19    2.23  1.28   5/22   111.54円
5/18    2.23  1.27   5/19   111.40円
5/17    2.22  1.26   5/18   111.06円
5/16    2.33  1.29   5/17   112.60円
5/15    2.34  1.31   5/16   113.77円


原油下げを追求する

201752日(火曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3440
6月相場は<ブレント原油20177月限>が基準限月です。当社では、当面の相場で<ブレント原油7月限>は<50.10ドル>を目指しており、下に抜けるアナを追求しています。
(@) ドバイ原油は、アジア市場のマーカー原油の一つです。41日〜428日の1カ月間のドバイ原油のスポット価格の平均値は<52.293ドル>、ドバイおよびオマーン原油の平均値は<52.546ドル>であった。わが国石油会社の<円貨/キロリットル建て原油コスト>は低下しています。為替は、<行き過ぎた円安の是正の第1段階(111109)>を達成したあと、幕間のインターバルをはさんで第2段階を目指します。
(A) 国際原油取引の指標は<ブレント原油>(ICE)です。
201751日(月)のブレント原油(ICE)
限月          始値  高値  安値  帳入値
ブレント原油 07月限  51.88 51.97 51.22 51.52  
-0.53
ブレント原油 08月限  52.18 52.29 51.56 51.86  
-0.51
ブレント原油 09月限  52.43 52.52 51.80 52.09  
-0.51
ブレント原油 10月限  52.58 52.70 52.02 52.28  
-0.50
ブレント原油 11月限  52.79 52.86 52.16 52.43  
-0.47
ブレント原油 12月限  52.86 52.94 52.24 52.53  
-0.47
ブレント原油 01月限  52.89 52.93 52.31 52.60  
-0.45
(B) 5月相場は<ブレント原油20177月限>が基準限月です。昨年(20161114日から今朝までの<ブレント原油7月限>の相場表を記します。
<ブレント原油7月限(20161114日〜201751日)
日付       始値  高値  安値  帳入値
05月02日(火)
05月01日(月)  51.88 51.97 51.22 51.52  -0.53
04月28日(金)  51.95 52.60 51.62 52.05  +0.23
04月27日(木)  52.11 52.28 51.01 51.82  -0.51
04月26日(水)  52.32 52.95 51.85 52.41  -0.16
04月25日(火)  52.18 52.84 51.80 52.57  +0.44
04月24日(月)  52.53 53.06 51.95 52.13  -0.31
04月21日(金)  53.45 53.77 52.08 52.44  -1.02
04月20日(木)  53.61 54.03 53.18 53.46  +0.03
04月19日(水)  55.32 55.69 53.09 53.43  -2.01
04月18日(火)  55.92 56.00 55.16 55.44  -0.44
04月17日(月)  56.16 56.44 55.78 55.88  -0.49
04月14日(金)  
Good Friday
04月13日(木)  56.08 56.52 56.05 56.37  +0.07
04月12日(水)  56.61 56.99 55.95 56.30  -0.30
04月11日(火)  56.40 56.65 55.83 56.60  +0.28
04月10日(月)  55.55 56.40 55.48 56.32  +0.79

●ブレントと「WTI」の価格差縮小
当社では、できるかぎりシンプルな原理で<売り>の目標を追求したいと考えています。必要がないなら多くのものを定立してはならない。現象を説明する方法が何通りかあるとき、よりシンプルな説明の方が正しい可能性が高い。原油相場の地合いについて、「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の価格差を手掛かりにして、次のような目安をお伝えしました。
(@)「ブレント原油」が「ニューヨーク原油」(WTI)に対する上ザヤを買い上げて、その価格差が拡大しているときは、原油相場の地合いは堅い。
(A) 反対に、「ブレント原油」と「ニューヨーク原油」(WTI)の期近の価格差が縮小しているときは、相場の地合いは弱い。
<ブレントと「WTI」の価格差縮小
「ブレント原油7月限」と「ニューヨーク原油(WTI6月限」の価格差を表示します。
日付    ブレント7限  WTI 6限  価格差
5月02日(火)
5月01日(月)  51.52  48.84   2.68
4月28日(金)  52.05  49.33   2.72
4月27日(木)  51.82  48.97   2.85
4月26日(水)  52.41  49.62   2.79
4月25日(火)  52.57  49.56   3.01
4月24日(月)  52.13  49.23   2.90
4月21日(金)  52.44  49.62   2.82
4月20日(木)  53.46  50.71   2.75
4月19日(水)  53.43  50.85   2.58
4月18日(火)  55.44  52.85   2.59
4月17日(月)  55.88  53.11   2.77
4月14日(金)  Good Friday
4月13日(木)  56.37  53.60   2.77
4月12日(水)  56.30  53.52   2.78
4月11日(火)  56.60  53.79   2.81
4月10日(月)  56.32  53.48   2.84
4月07日(金)  55.53  52.64   2.89
4月06日(木)  55.17  52.13   
3.04
4月05日(水)  54.63  51.60   
3.03 ※ピーク


低成長と低インフレ下の原油相場

2016829日(月曜日) 「市況研究社日報」(石油)第3275
週末の原油相場は、イエレンFRB議長のジャクソンホールの講演開始後に高下した。金融市場の投資資金は、原油や石油製品などのファンダメンタルズよりも、金利や為替、株価など、おおざっぱな「グローバル・マクロ」風の材料が好きなのかもしれない。彼らは常に「新奇なもの」を求めて右往左往しているので、先週は「イエレン議長のジャクソンホール講演」、今週は「米雇用統計」を材料に、目の前の印象を過大評価するのだろうと思います。しかし、当社では、こうした金融市場の投資資金とは別の道を歩んでいます。
2014年以降、ここ3年間の当社の基本姿勢
昨年(2015)の相場でも、以下の点を繰り返しお伝えしてきました。そして、それは本年(2016)も継続しています。
(@) わが国だけでなく、欧州でも米国でも潜在成長率が低下しており、インフレ圧力が抑制されているので、かつての金利水準に回帰することはない。米連邦準備制度の金融政策調整でも、考えられる将来について、現状の金融抑圧=超低金利が続く公算が大きい。
(A) 「米景気の回復で米金利がかつての水準に上昇する」という思惑から、法外な日米金利差の拡大を展望するのはバランスを欠いている。当社では、現状の為替水準について、<行き過ぎた円安>とみなしてその是正を追求します。現状の外為市場におけるドル円は、金利指標から乖離している。「黒田日銀の異次元緩和」によって進行した<コスト・プッシュ型の円安による物価上昇>には同調できない。<行き過ぎた円安の是正>は、追求できるタイミングで何度でも追求するつもりです。
(B) 先進国の<潜在成長率低下>と<低インフレ>だけでなく、<中国経済の成長減速>を含めて検討すれば、コモディティ価格には下押し圧力がかかる。かつてのような「コモディティ・バブル」や「資源エネルギー・ブーム」を買う情勢ではない。当社では<あたらしい標準=ニュー・ノーマル>への移行を追求します。
●低成長と低インフレ下の原油市場
当社では、先進国の潜在成長率の低下による<低成長>と<低インフレ>の下で、金利市場、通貨市場、原油などコモディティ市場を分析し、<あたらしい標準>を追求します。
[1] 日本や欧州だけでなく、米国も含めて先進国の潜在成長率が低下し、インフレ圧力が抑制されている中で、「1ドル=125円」の為替レートを正当化する<日米金利差>はありません。昨年12月から<日米2年債利回り格差>から推定して「95円」あたりまで正常化の範囲と考えて、第1段階、第2段階、そして現在「10595円」の第3段階をお伝えしています。
[2] 同じ意味において、先進国の<低成長>と<低インフレ>は、その金融政策のフレームワークを規定しています。それが、週末の<ジャクソンホール>の大きなテーマで、イエレンFRB議長はその脈絡のなかで「金融政策のツール」について講演した。週末のジャクソンホールのテーマは、<低成長と低インフレ下の金融政策>であった。
[3] われわれの場合、<低成長と低インフレ下の外為市場>
<低成長と低インフレ下の原油市場>
<低成長と低インフレ下のコモディティ市場>がテーマになる。

そのなかで、<あたらしい標準>を追求しなければならない。週末のイエレン議長の講演について、市場でさまざまな「解釈」がありますが、当社の考え方に最も近いものとして「日本経済新聞」の河浪武史氏の記事を紹介します。
<「日本経済新聞」河浪武史氏の記事
[4] 石油でも、穀物でも、そして、為替(ドル円)でも、822日(月)〜99日(金)の3週間は、売り買い双方の攻防をとおして<本年後半のテーマと方向>を闘い取っていく時期になります。<あたらしい標準>の売りの目標が達成できればよいと考えています。一気呵成(いっきかせい)に進むのではなく、重要な変化を含むプロセスの始まりの可能性を探りながら、マネジメントに注意して行きたいと思います。


買い方に<商いをさせる>ところ

2016119日(火曜日) 「市況研究社日報」(全体観)第3120
●当社の立場と意見

穀物でも、石油でも、為替(ドル円))でも、「ここまで下げたのだから、どこかで底打ちし、強烈な切り返しが始まる」という期待感がそれぞれの市場の中に底流しており、したがって、買い方に<商いをさせるところ>では商いをさせる必要があります。
1)市場の雰囲気
「ここまで下げたのだから、どこかで底打ちし、強烈な戻り相場がある」・・・先週から今週の相場は、そういう買い方の「心の作用」を反映していると思います。つまり、買い方は「大きく下げたものほど強烈な戻り相場がある」という「先入観」をいだいているので、その「先入観」に合致するように現実を歪曲して解釈し、それに反する証拠は受け入れることができない。「大きく下げたものほど、強烈な戻り相場がある」という買い方の「心の作用(=先入観)」は、実際に、戻りを追って買うまで続くと思います。買い方に相場を張るおカネがあるうちは、「強烈な戻り相場」を期待した買い人気に迎合し、戻りに飛び乗る可能性が高いと推測しています。買い方に<商いをさせる>わけです。そして、買い方がトコトンおカネを失い、相場を張ることができなくなったとき、そういう思惑も沈静化すると思います。現在は、<相場が買い方に商いをさせているところ>ではないかと考えています。売り方は、そういうところでは一所懸命にならない方がよいと思います。
2)中国の国内総生産(GDP
中国のGDP統計は<年末からたった19日後に>、1012月期の発表があるのはあまりに早い。このため、「6.8%」か「6.9%」か、数字を細かく詮索することに意味はないと考えています。おおざっぱに<二桁(けた)の経済成長がその半分に減速している>という認識でよいと思います。
3)二ケタの経済成長が半減するとき
二ケタの経済成長からその半分程度の成長率に移行するとき、需要の伸びはどうなるのか?この問題について、根津利三郎氏が昨年(2015630日にリポートを公表しています。当社では、昨年7月の「日報」、さらに8月の「日報」で繰り返し掲載しましたが、さらにもう一度転載します。<過剰投資、過剰生産能力、過剰債務>の問題は、鉄鋼業に限ったことではない。2003年以降の「資源エネルギー・ブーム=コモディティ・バブル」と「新興国ブーム」のなかで、中国以外の南米諸国にも拡大している。中国経済の減速は、需要の伸びがゼロになるとき、多くの人たちの想定を超えるものになる公算が大きい。

根深い鉄鋼の過剰設備問題  根津 利三郎

<拡大する過剰設備
筆者は2006年にOECD鉄鋼委員会の議長に就任した。今日までの間、世界の鉄鋼産業は過剰設備とそれに起因する低収益性、そして貿易摩擦に悩まされてきた。

図は今世紀に入ってからの世界の鉄鋼生産能力と鉄鋼需要をグラフにしたものである。これから明らかなように、両者のギャップ、すなわち過剰設備は2009年の世界金融危機以降急速に拡大し、現在6億トンになっているが、これからも続きそうな模様である。

日本、欧州、米国などの先進国にとって鉄鋼産業はもはや成長産業ではなく、収益性も低いことから今世紀に入ってから新たな設備増強は唯一の例外である韓国を除けば無いといってよい。設備拡大の大半は中国、インド、東南アジア諸国など非OECD諸国である。これらの国の多くはOECDには加盟していないものの、鉄鋼委員会には代表を送り、議論に参加している。

<鍵は中国
世界鉄鋼産業の将来の鍵を握るのは中国である。鉄鋼委員会の参加各国は中国の鉄鋼産業がこれからどうなるのか強い関心を持っている。多くの場面で中国対その他世界という感じで議論が進む。現在世界全体では鉄鋼生産能力は23億トンあるが、うち11.6億トンは中国にある。実際の中国の生産量は8億トン程度だから、稼働率は70%、過剰設備は4億トン、すなわち日本の全生産能力の4倍の過剰設備があることになる。

もちろんこれらの企業は雇用を維持し、少しでも収入を得ようと、赤字覚悟の操業を続け、国の内外に低価格輸出を行っている。アメリカやヨーロッパ諸国は長いこと中国からのダンピング輸出を非難し、対抗措置をとってきたが、最近では中南米やトルコ、アジアの国々も中国非難を強めている。これに対して中国は「中国の鉄鋼輸出は全生産の4%に過ぎない。日本の輸出比率は40%を超える。輸出がけしからんというならほかにももっと悪い奴らはいる。」と反論する。

<激変する中国市場
去る20155月パリで開催された最新の鉄鋼委員会で中国の代表が行ったプレゼンは率直かつ驚くべき内容であった。本年第一四半期の中国国内の消費量は前年から6%を超える減少(生産量は-1.7%)になった、というのである。

経済全体が7%の成長を目指しているというのに、鉄鋼生産、消費はマイナスだ。そして次のように述べている。"With massive overcapacity, steel making became one of the lowest profitability industries in China" (大規模な過剰設備によって鉄鋼業は中国で最も低い収益性をもつ産業の一つとなってしまった) 実際のところ、昨年の中国鉄鋼業は全体として利益率はマイナスとなったようである。

数年前まで、中国には黒を白と言い張るような強引なところがあったが、最近は自国の問題をより率直に認めるようになっている。2013年秋に国家計画委員会が過剰設備の存在を認め、その削減のための方針を公表している。新規投資を抑制し、既存の設備についても環境規制の強化や、効率の悪い小規模高炉の建設禁止などをうたっていた。ただ細かく聞いていくと実際の権限は地方政府が握っており、地域社会への影響は雇用問題も深刻なので、中央政府の方針をそのまま実施することは難しいようなことは言っていた。5月の会合では今後23年のうちにさらに5千万トンの設備を削減すると語っていたが、これだけでは4億トンある過剰設備のほとんどはそれ以降も残ることになり、中国の過剰設備問題はかなり長期にわたり続くと言わざるを得ない。

<日本の70年代に似ている現在の中国鉄鋼業
筆者は今日の中国の鉄鋼業がおかれた状況は19735年の日本鉄鋼業のそれに共通点が多いように思う。ともに二ケタの経済成長からその半分程度の成長率に移行している。その時鉄鋼需要の伸びも半減するのかといえば、そうではない。10%成長経済と5%成長経済は経済構造が全く変わってしまい、鉄鋼需要の伸びはゼロになるのだ。日本がこのことに気が付いたのは成長屈折が起きてから10年以上たった時点であった。1.6億トンの生産設備を抱えていた日本の鉄鋼企業が、9000万トンの需要でも生きていけるよう構造改革に取り組み始めたのは1980年代に入ってからである。

筆者は中国における鉄鋼需要の低迷は決して循環的なものとみていない。これから10年、20年と中国国内の鉄鋼需要は増えないであろう。すでに世界鉄鋼協会の見通しによれば2014年に続き1516年と三年連続でマイナス成長だ。いずれ需要も盛り返すと甘い期待のもとに設備削減や構造改善を遅らせれば、それだけ苦しみの期間が長引く、というのは日本の経験から中国が学べることだ。

<問題を複雑にする国有企業
中国の鉄鋼産業の構造改革が遅れるかもしれない、と考えるもう一つの理由は、中国の鉄鋼企業のほとんどは国有企業だからである。国家(政府および共産党)は資金や人事など様々な面から国有企業経営に介入している。政府の関係者は企業の運営は民間企業と同等だと主張するが、資金は国有銀行から借りているし、国内で調達される原材料の購買価格ははっきりしない。配当もどの程度支払われているのか、よくわからない。様々な形での補助金が投入されている可能性は大きい。市場経済ならば倒産するであろう企業が生きながらえて市場をかく乱している可能性は否定できない。ただし国有鉄鋼企業は中国だけでなく、インドや東アジアの国々やその他の新興国で広範にみられている。これらの新興国は現在のところ日本や韓国、中国などから鋼材を輸入しているが、工業化を進め自国の鉄鋼企業を持ちたいとの希望は強い。国家支援のもので更なる設備増強が続く可能性は大きい。

中国でも、東南アジアでも、中東でも、そして、南米でも、新興国市場の成長ダイナミクスは「国有企業」の果たす役割が大きかった。現在でも「政府」と「国有企業」の結びつきが強い。このため「資源エネルギー・ブーム=コモディティ・バブル」の終わりは、これら諸国において<政府・権力問題>になる可能性が高い。その危機からの脱出を「さらなる生産能力の増強=輸出市場におけるシェア拡大」に求める可能性も高い。構造調整のプロセスは不透明で、長期にわたる公算が大きいので、現在の段階では「直ちに買いに回る」ことは考えていません。差し当たり、現在の1月相場では、「大きく下げたものほど、強烈な戻り相場がある」という「買い方の先入観」に商いをさせているところと考えています。穀物でも、石油でも、為替(ドル円)でも、買い方が戻りに飛び乗って買えば、買いは一巡すると思います。

 


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